熱い思いと期待を乗せて大空へ!-鳥人間部T-MIT-
空を鳥のように飛ぶ人力プロペラ機。
その機体には、部員たちの努力の結晶と熱い思いが乗せられている。
機体製作の裏側に迫るべく、鳥人間部T-MITの現代表、星瑛徳さんにお話を伺った。
5つの班で構成されるT-MIT
―まずは、T-MITの活動について教えてください。
T-MITには現在、1年生15名、2年生5名の合計20名の部員が所属しており、翼・プロペラ・電装・駆動・フレームの5つの班に分かれて、それぞれの力を合わせて人力プロペラ機を設計、製作しています。
▲真剣に作業を進める翼班
―電装班では、どのようなことをするのでしょうか?人力プロペラ機なのに、電気が関係しているのですか?
機体の飛行速度や高度、傾きを計測し、表示する装置や、パイロットが尾翼を遠隔操作で動かす「サーボモータ」という装置をプログラミングしています。
なるほど…。パイロットが機体の状況を確認し、操作するために必要不可欠な装置を作っているのですね!
▲電装班が製作した計測器
安全に、軽く、美しく…!機体製作へのこだわり
―機体を作る上で、大切にしていることはありますか?
まずは、人間が搭乗するので、安全性について妥協しないというところですね。それから、できるだけ機体を軽くするようにしています。機体を軽くすることで、パイロットへの負担が軽減され、飛距離が伸びます。
―機体を軽くするためにどのような材料を使用しているのでしょうか?
「スタイロフォーム」という断熱材や、「CFRP」という炭素繊維強化プラスチックを使用したり、金属もアルミニウムを使用したりすることで、少しでも軽くなるような工夫をしています。2022年の鳥人間コンテストで使用した機体のパイロットの操縦席も、これらの素材でできているのですよ!
▲2022年度のコンテストで実際に使用した操縦席
―(実際に触らせていただいて)こんなに軽くて薄いのですね…!ところで、パイロットを誰が務めるかは、どのように決めるのでしょうか?
部内で、最も長い時間漕ぎ続けることができた人がパイロットになります。体力が大事になりますが、やはり、チームの誰かを飛ばしたいという思いがあるので、部員の中からパイロットを選出します。
―2021年度は鳥人間コンテストの人力プロペラ機部門で見事優勝し、2022年度は優勝は逃したものの、チーム歴代最長記録を更新したということですが、長年大事にしているT-MITの機体ならではのこだわりは何ですか?
長年、翼の精度と美しさにはこだわっています。約30メートルある主翼の美しさは保ちつつ、来年の鳥人間コンテストに向けてさらに翼の精度を上げられるように工夫しています。2022年度の大会では、最高のパイロットと最高の機体で大会に挑み、チーム歴代最長記録を更新することができたものの、満足のいく飛距離には到達していません。そのため、来年に向けて主翼の構造を一新するという決断に踏み切りました。パイロットの足元からプロペラに向けての力の伝達方法を検討し直したり、さらに軽さを追求したりして、駆動効率が上がることを目指しています。
▲テストフライトの様子
こだわりぬいて製作した部品が一つの機体に…!感動的な瞬間
―現状に満足せず、さらなる高みを目指して、新しいことにもいろいろチャレンジしてみているのですね…!お話を聞いていると、専門的な知識や技術が必要だということがよくわかります。
T-MITには、システムデザイン学部の学生が多いので、授業で習ったことを機体の製作に活かせる機会が多いです。先輩に教えてもらったり自分で勉強したりするほか、鳥人間コンテストで共に闘う他大学の作業場を見学させていただいたりもしています。お互いに情報交換をして、他大学の良いところを取り入れつつも、T-MITの良さを活かしたオリジナルの機体を製作できるようにしています。
―授業で学んだことを、課外活動で活かせることってなかなかないですよね。様々な経験をしながら、皆さんが純粋にものづくりを楽しんでおられる姿が素敵ですね! 星さんご自身が、T-MITで活動していて心が動いたのは、どのような瞬間ですか?
2022年度の機体製作で、駆動部分を担当したのですが、機体にパイロットが搭乗してプロペラがうまく回ったときが、いちばん嬉しかった瞬間ですね。製作している段階では、ただの部品にすぎませんが、みんなが作った部品が組み合わさって動いたときの感動は大きいです。新しいことを取り入れたり、何度も設計し直したりするなかで、失敗の繰り返しで心が折れそうになるときもありますが、自分が作った部品が機体の一部となって、その機体に仲間が乗って飛んでいる光景は忘れられません。
―うれしさや苦しさ、仲間とともに試行錯誤した思い出全てを乗せた機体が空を飛んでいるって、本当に感動的ですね…!
▲部品を組み合わせている段階の主翼
―来年度の機体の名前は、「VEGA」ということですが、どのような意味が込められているのでしょうか?
鷲が獲物を狙いに急降下している姿を、私たちが優勝を狙いに行っている姿と重ね合わせて、この名前にしました。
―来年度の鳥人間コンテストで、皆さんが作った機体が飛んでいる姿を想像するとワクワクしますね!頑張ってください!
▲集合写真
自分の手で作った機体が、仲間の一人の人力だけで空を飛ぶ。科学技術がめざましい発展を遂げるなかで、人力でものづくりに励むT-MITの部員たち。そこには、人力であるからこそ、生まれる感動がきっとあるのだろう。大会当日は、天候によっては飛行することすら諦めざるを得ないときもある。また、様々なトラブルにより思うように結果が出ないときもある。しかし、少しでも遠くまで安全に機体を飛ばすために、細部までこだわり、T-MITだけの機体を製作する。そんな彼らの熱い思いを乗せた「VEGA」が優勝を目がけて大きく空に羽ばたくことだろう。来年の鳥人間コンテストでの彼らの活躍に期待したい。
【取材・文:人文社会学部 人間社会学科 2年 綾桜子(学生広報チーム)】