プロフェッショナル仕事の流儀 ディレクターが語る就活応援塾
2022年4月15日(金)に東京都立大学キャリア支援課により開催された本講座は、NHK制作のドキュメンタリー番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』のディレクター3名を講師に招き行われた。働く人々に向き合う“プロ”たちが番組を制作する上で意識していることを基に、学生たちに就職活動のヒントを教えてくれた。
本講座は、対面とオンラインで延べ200名を超える学生が参加した。講師陣の巧みな話術もあり、時折笑い声も混ざりつつ、質問も多く飛び交うとても活気あふれるものとなった。参加した学生たちは、「テレビ局で働くことに興味があった」、「番組で取り上げられた『プロフェッショナル』を知っていて気になった」、「就職活動を控えていてヒントを得たかった」など動機は様々であったが、終始熱心に耳を傾けていた。
講座の中で特に印象的であったのが、「視点を持つ」という言葉である。取り上げるプロフェッショナルのどこがどう魅力的で、どのように視聴者を感動させられるか。そのドキュメンタリーで大切な「視点を持つ」ことは、就職活動においては、自分の魅力を伝えることにつながっていく。学生生活で何を意識して結果として何を得たのか、それに気付くために必要なのが自身の行動に視点を持つことであるというのだ。コロナ禍もあり“ガクチカ”※1 に書くことをうまく見つけられない人、何かをしたという実感を得られていない人でも、視点を持った行動は今からでも始めることができる、見直すことができるというのは力強いメッセージであるとともに自身を見つめ直すきっかけにもなるだろう。
講座を通して、自身の行動に視点を持つということは、就職活動はもちろんのこと、人と関わっていく上で非常に重要なキーワードであるように感じられた。自分の魅力を相手に伝える工夫をすることは、相手を理解し、ひいては自身の視野や活動の幅を広げることにつながるのではないだろうか。
※1 学生時代に力を入れたことの略。就職活動の面接等において質問事項として設けられることが多い。
【取材・文:人文社会学部人文学科 大島美桜(学生広報チーム)】
講演終了後、NHKの新保さん、穐葉さんにお話しを伺った。
【NHKディレクター 新保さん×学生広報チーム】
▲ 取材の様子
ー素敵な講演ありがとうございました。同じ番組のディレクターを務めるお三方の中でも、“プロ”の定義がそれぞれ違っていたのが印象的でした。
新保さんがディレクターの仕事をしようと思ったきっかけは何ですか?
新保さん)学生時代に映画サークルに所属していたので、もともと映像を通してものづくりをすることに興味がありました。NHK入社後は、ドラマ制作に関わる仕事もしていたのですが、ドキュメンタリー制作の方がおもしろいなと感じるようになりました。
ーどうしてドキュメンタリー制作に惹かれたのですか?
新保さん)ドラマを制作している時よりも、ドキュメンタリーを制作している時の方が、実際に人と触れ合って、自分自身がハッとさせられるというか、感動する瞬間が多いな、と。それで、自分はドキュメンタリー制作がやりたいのだと気づきました。
ードラマとはまた違った魅力ですね。たしかに、『プロフェッショナル 仕事の流儀』を見ていても、その人のリアルな生き方から、視聴者側もいろいろなことに気付かされます。
私たち学生広報チームも、取材をする機会があります。取材って難しいな、と新保さんにお話を聞いている今でも思うのですが、新保さんは、取材をする時にどのようなことを心掛けていますか?
新保さん)取材が、単なるQ&Aではなく、対話になるように心掛けています。そのためには、自分の話を混ぜながら質問することが大事になってきますね。聞くために話すのです。質問ではなく、対話にするためには、もちろんその人のことはとことん調べていきますが、その人の後ろにいる視聴者の存在は忘れてはいけないと思っています。ディレクターとして密着していると、その人のことは当然よくわかってくるし、事前に調べて既に知っていることもあるので、どうしても、その人のことをよく知ったつもりになってしまうのです。でも、視聴者は何もその人のことを知らない。だから、僕も、初めはあえて何も知らないふりをします。
ーなるほど…あえて何も知らないふりをするってなかなか難しいことですよね。でもだからこそ、その人の本当の姿、生き方が見えてくるのですね!
今後の取材に活かしたいと思います。ありがとうございました!
【NHK穐葉さん×学生広報チーム】
▲ 取材の様子
ーこのような素敵な講演会を企画してくださり、ありがとうございました。NHKさんが東京都立大学で講演をしてくださるなんて、びっくりです…!
穐葉さんは、NHKの様々なコンテンツを視聴者に届け、利用してもらうための放送事業マネジメントの仕事をされているということですが、様々なコンテンツを考える際に、どのようなことを意識していますか?
穐葉さん)テレビは、受動的だからこそ、何気なく見ていた内容から新しい発見がありますよね。だから、視聴者の生活と文化を創っていくことを目標に、役に立つ情報を届けていきたいと思っています。視聴者のみなさんに、NHKを見るとほっとする、NHKが放送している内容なら安心できると思ってほしいです。
ーネットが普及した今の時代ならではのテレビの存在意義ですね。
私たち学生広報チームでも、毎月Twitterの投稿企画を実施しています。穐葉さんが、企画をする時に心掛けていることはありますか?
穐葉さん)企画の原点は、視聴者の声だと思っています。そのため、今、誰が、どんなことに困っているのか?ということを知るところから始めますね。そこからヒントを得て、視聴者のためになる情報を届けられるようにしています。
ー相手のことを知ろうとする強い気持ちは、取材においても企画においても大事ですね。
ありがとうございました!
【感想】
実際に放送事業の現場で活躍されているお二方から、取材のコツや就職活動へのアドバイスなど、他にも多くの貴重なお話を聞かせていただいた。取材をした私にとって、お二方は、人の話を“聞く”ことで相手の優れた部分を見つけるプロフェッショナルであり、視聴者のために行動することのプロフェッショナルでもあるのだと感じた。“○○のプロ”という表現はよく使うが、プロフェッショナルの定義は人それぞれだ。だがきっと、どんなに小さなことでも、自分でテーマ、ゴールを決めて取り組んでいれば、どんな人でも、誰かにとってのプロフェッショナルなのだと思う。プロフェッショナルであるかどうかは、自分で決めるものではなく、他の人に決めてもらうものであるはずだ。私自身も、今しかできないことにたくさん挑戦して全力で取り組み、また、他の人のプロフェッショナルな部分を見つけてあげられる人になりたいと思った。
【東京都立大学キャリア支援課について】
東京都立大学キャリア支援課は、就活のお手伝いをする、というだけの堅苦しい場ではなく、好きなことを極めたい!大学でこんなことがしたい!という時に、学年を問わず気軽に相談できる場です。今回のような就職活動についての講演だけでなく、個別でのキャリア相談や、各種ガイダンスの実施、OBOG訪問の仲介など、私たちのキャリアを常に支えてくれる存在です。自分のキャリアについて楽しく考えるために、やりたいことがあってもなくても、困ったとき、何か話をしたいとき、ぜひキャリア支援課に足を運んでみてくださいね!
キャリア支援課のホームページはこちら!→https://career.tmu.ac.jp/
【取材・文:人文社会学部人間社会学科 綾桜子(学生広報チーム)】