大空に挑むバードマンたちの軌跡
【2019年12月13日掲載記事】
ー2019課外活動団体紹介②(人力飛行機研究会MaPPL)ー
MaPPLは、動力を持たない人力飛行機を制作・設計を行っている首都大学東京の鳥人間サークルです。名前の由来は(Man-Powered Plane Lab)の頭文字をとったものです。
現在39名からなるメンバーは、文系理系を問わず様々な学部から集まっており、毎年7月に行われる鳥人間コンテスト優勝に向けて南大沢キャンパスで日々腕を磨いています。今回私たちは鳥人間コンテストの前とコンテスト後の活動について取材させて頂きました
1度きりの挑戦。数々の努力。
鳥人間コンテストとは、毎年7月下旬に琵琶湖の空に自作の滑空機または人力プロペラ機を飛ばし、その飛行距離を競う大会だ。MaPPLは、このコンテストに滑空機部門で出場している。
「目標は優勝。」そう語るのは次期代表の山本一摩さん(電子情報システム工2年)だ。昨年度の大会では飛行距離450.17mの大記録を樹立したものの機体保持者が落水したため、優勝を前に失格し涙をのんだ。昨年の悔しい思いを胸に、今年こそはと大会に意気込む真剣な表情が印象に残った。
機体の設計とパイロットの間に立つ代表は、機体の設計とパイロットの相性が大事だと語る。パイロットの体格に合わせて操縦しやすいように設計班と連携し、機体設計に反映させている。設計の思い描いた通りになるとベストであると語る彼だが、パイロットの要求通りに設計・製作するのは簡単ではない。書き起こした設計図は、大会の書類審査を通過しないと出場が許されないのだ。審査を通過した後も、納期に間に合うように製作とテイクオフの練習日程を考慮して逆算するスケジュール管理能力が試されている。
パイロットの佐野功汰さん(建築3年)は、5月から始まるインフォメーションギャラリーでの走り込み練習だけでなく、毎週日曜日に茨城県の大洗で他大学と合同でハンググライダーに乗り操縦感覚を掴む練習をしている。本番に向けて、バランス感覚や体重の調整日々の継続する力と根気が必要だと語る。
部員たちは、放課後や土日に機体パーツの製作や組み立て、テイクオフ試験に向けて1年生からチーム一丸となって勤しんでいる。
しかし、鳥人間コンテストは、滑空機とパイロットの腕だけで結果が出るものではない。大空を舞台に機体を操縦しなければならないので、天候の影響も受けやすく、練習の成果を思うように発揮できなかったり、最悪の場合飛ばすこともできず涙を流すチームもある。まさに運との勝負だ。鳥人間コンテストは泣いても笑っても1度きりである。2019年は果たして…
▲ 重心合わせの様子
▲ 陸上競技場にて
練習の成果、新たな目標へ
迎えた7月27日。滑空機部門の中で1番に飛んだ。今年度は69.56m、参加した17校のうち8位という結果に終わった。昨年に引き続き、台風の直撃により、雨や強風の影響を色濃く受けた。
この結果を踏まえ、パイロットを務めた佐野さんは、フレーム(パイロットが乗り込む部分)の強度が弱かったこと、頻繁に変化する風向きの見極めを今年の反省点として振り返る。記録を伸ばすためにはパイロットの技量だけではなく、設計精度の高さも非常に重要だ。このことから来年度に向け、鳥人間に挑戦するうえで欠かせないパイロットの安全性をより高め、記録を伸ばすためにもフレームの強化とさらに精度の高い機体設計を求めていきたい。そして風の向きや強さを判断して微調整を行い、より的確なテイクオフを行うことが必要だろうと語った。
そんな彼らの来年度のパイロットは女性が担う。掲げた目標は『女性記録更新、そして優勝』だ。
実は2016年には首都大学東京のパイロットが392.06mで女性記録を出しているのだが、翌年には他団体に更新されてしまった。また、昨年度にも学生新記録を出したものの補助員落水により参考記録となったという輝かしくも苦い思い出がある。そのため、目指す目標は悲願とも言えよう。
創立後、1993年における優勝をはじめ数々の入賞経験から滑空機部門において強豪とも称されるMaPPL。しかし、メンバーの皆さんは1年に1度きりの琵琶湖の空へ向けて、妥協することなく、日々理想を追いもとめている。来年へ向け彼らの挑戦はもうスタートしている。さらなる飛行へこれからも応援していきたい。
▲ 翼を作成中(写真左)インフォメーションギャラリーでの走り込み練習(写真右)
▲ 集合写真
記事作成にあたり、7月のテイクオフ練習から鳥人間コンテスト後まで長期にわたり取材に応じて頂いた次期代表の山本さん、パイロットの佐野さん、空力設計担当の酒見さんを始め、MaPPLの皆様。本当にありがとうございました。
【取材・文:建築学科 繁縄将太、観光科学科 浅利祐梨奈(学生広報チーム)】