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2022.03.25
※2022年3月以前に都立大HP「People都立大人」に掲載された記事のアーカイブ記事です。

【学生広報チーム】教育改革推進事業の成果発表会を取材しました!

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【2019年9月3日掲載記事】
2019年8月1日、首都大学東京南大沢キャンパスにて、教育改革推進事業の成果発表会が開催された。教育改革推進事業とは、「首都大学東京の教育改革を促進するため、本学独自の特色ある教育の取組や、アクティブ・ラーニングを推進する取組に対して、そのスタートアップにかかる費用を支援する事業」である。今回は2018年度終了分9件のうち、6件について発表が行われた。

キービジュアル
会場の様子
1つ目は、和気純子教授(人文社会学部 人間社会学科)による「多世代交流による地域創生(福祉コミュニティ形成)プログラム」についての発表

内容として、南大沢地域の住民同士のつながりを形成するため、教員や学生が主体となり、「みなみおおさまカフェ」というコミュニティカフェをオープンし、住民の引きこもりや孤立を防ぎ、住民同士のつながりを構築するというものであった。
取組について、地域との関わり合いについて講義形式で学ぶのではなく、実践形式で学び、かつそれが地域貢献となっている点が非常に興味深かった。また、学生においては、自分たちの取組により地域の人々の交流の場を生み出すという成果を実感できることが、良い学びにつながると思われる。

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和気純子教授(人文社会学部 人間社会学科)

2つ目は、野口昌良教授(経済経営学部 経済経営学科)による「外部検定試験対策講座を利用した能動的学修への動機づけと教育の質保証」についての発表

内容として、簿記・統計・経済学の外部検定試験対策の講座を開講し、受講生には事前学習用の教材を配布し、外部講師による授業を行うというものであった。 この取組の特徴は、講座が学生の能動的学修の動機づけになることを図るだけでなく、正課の講義の質を高めることを狙っていることである。これにより、該当の講座を受けていない学生にもプラスの影響を与えられる点において、有意義な取組であると感じた。また、受講生に一年生が多かったという報告から、低学年次の学生の方がこのような講座に興味を持ちやすく、かつ実際の受講に繋がりやすいのではないかと思った。そのため、学生に能動的学修の習慣を身につけさせるには、一年生のうちからそのような機会を与えていくことが重要なのではないかと感じた。

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野口昌良教授(経済経営学部 経済経営学科)

3つ目は、好村滋行准教授(理学部 化学科)による「海外で活躍する理系学生のためのEnglish Laboratory」についての発表

内容として、グローバルに活躍したいと考える理系学生のために、海外インターンシップや論文発表で役立つ英語力を養成するというものであった。特に、理系学生のための実践的英語力養成を目的として掲げながらも、その根本となる数学・情報科学の重要性を述べられていたのが印象的だった。一方で、現行の予算では学生に人気の講師を招くのが困難である点など、事業そのものに対する提言を述べられており、今後の教育改革推進事業の在り方についても考えさせられる報告であった。

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好村滋行准教授(理学部 化学科)

4つ目は、黒川信准教授(理学部 生命科学科)による「同窓生―留学生との協働による『東京の魅力』の多言語発信」についての発表

内容として、学生が各分野で活躍する同窓生や専門分野の教授陣から指導を受けながら、「東京の魅力」についての日本語ドキュメントを作成し、それを留学生が母国語に翻訳することで、「東京の魅力」を多言語発信するというものであった。
取組について、「東京の魅力」の発信方法に注目し、ヒンドゥー語やドイツ語など15の言語による翻訳を一覧にすることで多言語発信を実現したのは先進的な取組であると感じた。そして、学生にルーブリックによる自己評価を行わせることは、学生本人にも成長実感を持たせることができ、良い経験になると思った。

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黒川信准教授(理学部 生命科学科)

5つ目は、石原正規准教授(人文社会学部 人間社会学科)による「心理学研究を体験学習するためのシステム構築」についての発表

内容として、心理学研究を正しく理解できるよう、講義時間外での心理学研究についての体験学習と、講義でのレポート課題などの学習を連動させるというものであった。
学生の心理学に対する通俗的なイメージを払拭するべく、講義への積極的な参加を促し、授業外体験学習にも結び付ける取組は、まさに従来の講義の形を改革するものであった。授業外学習に参加し、レポートを提出した学生の方が、未提出の学生に比べて、期末試験の点数が有意に高いという報告は、学生にとっても注目すべき内容である。

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石原正規准教授(人文社会学部 人間社会学科)

6つ目は、金子新准教授(システムデザイン学部 機械システム工学科)による「地域産業との協働によるものづくり教育―創造的学習空間としての日野キャンパス工作施設―」についての発表

内容として、実務経験のある技術者を外部講師として招き、日野キャンパス工作施設を活用して機械構造の設計と加工に関する課題解決型学習を行うというものであった。 取組について、既存の工作機械を生かそうとする発想から、それ自体を作ろうとする発想へと学生の考え方をシフトさせるような演習内容が非常に興味深かった。普段の講義では気づかないような、発想の転換を実感できることが、学生にとって重要な経験になると思った。

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金子新准教授(システムデザイン学部 機械システム工学科)

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上野学長

今回の成果報告会に参加させていただいて、これだけ多くの分野の先生方が教育改革に乗り出していることを初めて知った。 上野学長のお言葉にあったが、これらのようなスタートアップの取組が支持されれば、今後も継続的な事業として、質の高い学びを得る場が形成されるだろう。学生たちにとっても、その貴重な機会を活用し、自ら考え、工夫する力を高めていくことは、今後の人生においても役立つ経験になるはずだ。

【取材・文:経営 長野由佳(学生広報チーム)】

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