2018課外活動団体紹介⑧ さはらかん
【2019年3月12日掲載記事】
皆さんはCanSatをご存知だろうか。衛星開発技術の教育を目的に、飲料缶を材料として、小型衛星と同等の技術を用いて制作される擬似人工衛星がCanSatだ。製作したCanSatを小型のロケットによって打ち上げ、着地後の自律制御の挙動を評価する競技会が日本やアメリカで開催されている。その主な大会であるARLISSには、首都大学東京から出場する団体がある。日野キャンパスで活動する“さはらかん”だ。
さはらかん
さはらかんは主に航空宇宙システム工学科の学生から構成され、1年次の秋から製作を始め、2年次の夏にARLISSに参加している。
ARLISSは例年9月にアメリカ合衆国ネバダ州ブラックロック砂漠で開催される大会で、会場の広大さを活かし、CanSatを地上4000m以上の高さまで打ち上げてからミッションを行う。さはらかんが参加したコンペティションは、着地後にCanSatを目的地まで自律移動させ、目標地点までの距離を競うものであった。
彼らの製作したCanSatは、大会でも期待されるような珍しい機体。大会開催期間は、ライバルたちも形状のおもしろさから近寄ってきた。スターウォーズのBB-8を彷彿させるような球状の機体は、従来のローバーのデザインとは一線を画する。しかし、この設計は見た目の珍しさや可愛らしさではなく、従来のローバーの欠点を詳しく分析し追求した結果導かれたデザインであった。
▲ さはらかんの製作したローバー
今年出場したチームメンバーは5名。
1年次のころから頻繁にミーティングを行い、従来のローバーの欠点を分析した。CanSatで打ち上げられる小さいローバーでは、小さな轍に引っかかれば動かなくなり、砂を巻き込んでも動かなくなる。それらを克服できるアイデアを皆で出し合い、最終的に機体班長菊地君の「球状でタイヤのない」デザインが採用された。1年次の秋に形状が決まってからは、プロジェクトマネージャーの茂木さんのスケジュール管理のもと、製作が進められた。8月に行われた打ち上げの予行演習を改善の足がかりとして、追い込み期間は昼夜を問わず調整した。
影ながら作業を支えるのはキャンパス近所のいきつけのお弁当屋。ローバーのバッテリーをみても、お弁当屋への愛とさはらかんの遊び心がよくわかる。
▲ お弁当の名前のつけられたバッテリーたち
2018年9月10日、ブラックロック砂漠で最初の打ち上げが行われた。
着地の衝撃を受けて破損し、走ることが出来なかった。悔やまれる結果ではあったが、広い砂漠の中から機体を発見することはできた。ARLISSでは、1度目の打ち上げ後、1日空けてから2度目の打ち上げが行われる。次の打ち上げに向けて、急ピッチで、手のつくせる限りの改善を目指した。
9月12日、メンバー5人が見守る中、最後の打ち上げが行われた。結果はロスト。位置情報が取得できなくなり、数日かけて探しても機体を発見することはできなかった。ロストした機体が翌年のARLISSで発見される事例もあるらしく、代表の指田君は「来年誰かが見つけてくれれば」と冗談混じりにいう。
CanSatの趣旨である衛星開発技術のノウハウを学んだ他にも必ず得たものはあったはずだ。取材の最後には、さはらかんの活動を通して学んだことや今後の目標を伺った。
金子君は「『プロジェクトチームで成し遂げる』ということを学べた。
様々な専門技術が手を合わせる衛生開発において、チーム運営や交流は非常に大事だと感じた」と語る。米国の宇宙ベンチャー企業のTシャツを着て取材に臨んだ勝部くんは「学んだことを宇宙産業に活かしたい」と語る。
彼らの今後の活躍にかなり期待できそうだ。
▲ ブラックロック砂漠にて小型ロケットと
【取材・文:地理環境コース 山本 裕稀(学生広報チーム)】