2018課外活動団体紹介④ ヨット部
【2019年1月31日掲載記事】
7月某日、早朝にもかかわらず江の島ヨットハーバーには続々とセーラーたちが集結し始めていた。首都大学東京体育会ヨット部もその一つだ。私たち取材班は一際活気のあるそのチームにお邪魔させて頂いた。
ヨットに魅せられた、江の島の戦士たち
今年度提案公募課外活動支援に申し込んだ理由について、岡本晶さん(生命・3年)は「ヨット自体の知名度向上」と「ヨット部品代獲得」を挙げた。例えば、ヨットの前進になくてはならないセールは、強風の日に出艇すると4レースほどでぼろぼろになってしまうくらい繊細なパーツだ。こうした部品の交換は必至であるが、部品一つ一つの単価は決して安価ではないため、今回の支援は部にとって大きな助けとなったそうだ。
▲ AM8:30 ヨットハーバーから出艇する
首都大ヨット部の魅力は何なのか。当日レスキュー艇の船長を務めていた荒井健太さん(機械工・3年)にお話を伺ったところ、「仲の良さ」を挙げて頂いた。練習期間中は合宿所に泊まり込んで活動しているヨット部。「合宿生活を送っている中で芽生えた絆が強い。夏休みは(活動日が)週5日だから、家族よりも、誰よりも過ごす時間が長い」という。取材中も、海上で強い日差しを浴び続ける過酷な環境の中でも、常に明るい雰囲気で、お互いに声を掛け合いながら練習していた。ヨットを操縦するうえでも、息の合ったチームワークは欠かせないだろう。
また、新入生についても、「みんな一人一人個性がある。毎年毎年いろんなやつが入ってくるから、中々飽きない」ことが、毎年活気溢れる活動を続けている要因であるように感じる。
そんなチームが目指す目標について、「9月末にある秋インカレ(第85回関東学生ヨット選手権大会)で決勝に進むというのが一番の目標」だという。「そのためにレースで数々の経験を積むための一つとして、来週(取材当時)東日本スナイプに出場する」 レースでの首都大ヨット部の強みをお聞きしたところ、「スタートで前に出る勇気。スタートラインでフライングしたら失格になるんだけど、それをびびって大体のレースのときはラインから低い位置からスタートするんだよ。ただ、強豪はもちろんだけど、うちらは弱小だけど、ちゃんとラインを見極めて、ちゃんとスタートと同時に対峙する勇気がある。ヨットのレースは基本的にスタートが7割8割って言われている。スタートが良ければ後は安定して走れる。ヨットは減点方式だから、いかに冒頭とかコースをミスらないで、いけるかっていうのが大事だよね」と堂々と語って下さった。
▲ 笑顔で練習する上田さん(写真左、物理・2年)と花野さん(写真右、人文社会・3年)
また、第27回全日本学生女子ヨット選手権大会470クラスに出場予定(取材当時)の武石早代さん(理学療法・2年)、朽木美月さん(看護・2年)にも大会への意気込みをお聞きした。「蒲郡(試合会場)まで行くからには関東代表として頑張って。蒲郡行くまでに練習を積んで、爆風でも恐れないクルーになって頑張ります(武石さん)」「出場自体できると思っていなくて。奇跡的に繰上げっていう形で出場できたので、 順位を残そうというより、これからの大会の主要な地になっていく蒲郡で貴重な経験をしようという気持ちで、色々チャレンジしようとパートナーと話しています(朽木さん)」
主将(取材当時)の渡邊たろうさん(航空宇宙・4年)は、「去年は470とスナイプとある内の片方しか決勝に行けなくて。僕は今年が最後の年なので、両方のクラスで決勝に行って、決勝の舞台でしっかり戦えたらいいなと思っています。その『両クラス決勝に行く』ってところにこだわりを持っていきたいです。そして団体戦で全日本行きたいですね!かなり厳しい壁ではあるんですけど、でもこの夏はそこをモチベーションにやっていきたいなと思います」と熱く語って下さった。
▲ 左から朽木さん、渡邊さん、武石さん
この日一日を通して、ヨットという競技の魅力について、私たち取材班も体感した。部員の方々の御厚意により、実際にヨットを操縦する体験をさせて頂いたのだ。初心者の私にとって、体のほとんどを船から投げ出しているような状態で体勢をキープさせる独特の動きは難しかったが、部員の方々による懇切丁寧な指導により、ヨットに乗る楽しさを知ることができた。それと同時に、船のバランスをとる動きはもちろん、船酔いや強風と戦いながら、風や潮の状態を読んで瞬時に次の判断を下すことの難しさも想像できた。けれども、その奥深さにこそ、ヨットの醍醐味があるのではないだろうか、と素人ながらに感じた。
そして今月。新主将となった花野聖冬さん(人文社会・3年)に今年の活動を振り返って頂いた。まずは、今年良かった点について、支援金獲得によるセールの新調は、部の強さに大きく関係したという。「新しいセールは面積が大きくて、使っていくとどんどん縮んで小さくなっていっちゃう。(セールが大きいということは)風を受ける面積がとても大きいということなので、使える風が多くて、速くなる。だからスピードに直結していった。レース前にはちゃんと練習して実力もつけることができて、セールでの差がなくなることと、技術の差がなくなることで(レースに出場する)3艇のスピードを高い水準で揃えることができた」
ではそのためにどのような工夫を加えたのか。「できるだけ多くの船で練習するっていうのを意識していて、(レースに出場する)3艇がいたら(その中で自分がどれくらいの速さなのか)はっきり分かるし、練習の幅も広がる。でもレスキュー(艇)に人が乗らないといけなくて。そっちに人が割かれてしまうと実際にヨットに乗る人が少なくなってしまう。それがないように、レース前は他の大学の人と一緒に練習するようにして、他の大学に練習を見てもらうというか、合同で練習をすることによって効率を上げた。特に強いところを選んで練習するようにはしていました。あと今年の特徴的な出来事なんだけど、いつも江の島は風がとっても強くなると赤旗(出艇禁止のサイン)が出て練習できないんですが、インカレの一カ月前くらいから僕たちはレース海面に近い別の海面で練習していて。いつもはマックス13メートル(毎時くらいの風で)しか練習できないんですけど今年はマックス15メートル(毎時)くらいの(風が吹いている)、誰も練習していない海上で練習できたのは、身を削ったんですけどすごい成長になりました。風が強いと船も思うように動かないんですが、そこで(海に)出ておいて良かったです。フィニッシュがちゃんとできる、風がなくてもよく動けるように練習していました」
▲ 7月取材日の江の島の天気は晴れ、軽風の中での練習となった
大会を終えて、「大会の結果は予選が25校くらい出た中でうちのクラス(470級)は7位で通過して、決勝が最終的には15校中14位で、昨年と比較すると結果自体はそんな大して変わってないんですけど、去年は予選突破はもちろんぎりぎりで、決勝はもうそれだけ、出るだけで精いっぱいというか。関東は全国でトップ3取るくらいの大学が決勝に出ている中でレースをするんだけど、(上位校に)早くフィニッシュをされると制限時間内にフィニッシュできないということもあって、最下位だったんですね。でも今年は決勝の舞台で一日目が終わった時点では9位とか10位とかで、これもしかしたら全日本いけるんじゃないかというところくらいまではいたんですよ。決勝で戦うような実力ってどんな実力があればいいのかというのが少しだけ見えてきた。例年全日本に出るチームっていうのは決まっているんですけどただ最後の1枠とか2枠というのは結構実力が拮抗してて、順位がすごい変動していくところなので、次の目標を設定するならそこを越えていきたいというのがあります」と確かな手ごたえを感じたことを語って下さった。
最後に、今後のヨット部の目標を、チームの在り方についてとともにお聞きした。「秋インカレが終了したあとに目標として決めたのは、『両クラスで全日本に行く』っていうところです。それを達成するには練習の効率だったり、みんなの気持ちだったりがついていかなきゃと思っていて。ヨットをやっていて楽しくないと意味がないと思うので。強いチームを目指しつつみんなが楽しく乗れるチームにしたいと思います。みんながばらばらにならないようにしたい、それが一番大事といっても過言ではないですね」最後は『強く、楽しく』のモットーにふさわしい形で締めて頂いた。
これからもまだまだ目が離せないヨット部。来年度の活動にも注目していきたい。
体育会ヨット部
現在総勢15名。毎週末、江の島ヨットハーバーにて活動している。
今年度は全日本女子インカレ470級本レースに、朽木・武石ペアが出場。第85回関東学生ヨット選手権大会では470級・スナイプ級の両クラスで決勝進出を果たした。
【取材・文:経営 長野由佳(学生広報チーム)】