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2026.09.28
ゼミ・研究室レポート Vol.6

超小型衛星の開発から軌道上のごみ対策まで、宇宙システムの研究に取り組む「佐原研究室」

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指導教員による少人数体制の下、学生が興味あるテーマについて専門性を高めていく「ゼミ・研究室」を紹介するシリーズ企画。第6回目は、システムデザイン学部・航空宇宙システム工学科 佐原宏典先生の研究室です。

キービジュアル

推進系から構造設計、軌道力学まで、
宇宙をまるごと工学する研究室です。

佐原 宏典 教授
システムデザイン学部 航空宇宙システム工学科 佐原 宏典 教授

徳島県徳島市出身。京都大学工学部卒業後、東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻にて博士(工学)取得。宇宙航空研究開発機構、東京大学を経て2008年に首都大学東京(現・東京都立大学)に着任。2016年より現職。専門は宇宙推進工学、超小型衛星システム工学。

Q.まずは研究室の概要や扱うテーマなどを教えてください。

超小型人工衛星をはじめとする宇宙システム全般を対象に、宇宙推進、衛星のシステム設計、打上げ時の激しい振動から機器を守る構造設計、そして軌道上の宇宙ごみ(スペースデブリ)対策まで、幅広いテーマの研究をしています。学生の多くは、模擬人工衛星「CanSat」の開発とそのアメリカでの打上げ実証実験「ARLISS」への参加を通じて、ものづくりの過程を実践的に学びます。

Q.学生たちはどのような研究に取り組んでいますか?
また、どのような力を身に付けていますか?

研究室の学生は、衛星の構造設計や軌道設計、宇宙ごみ対策など、それぞれ異なるテーマに取り組んでいます。4年次に配属されると、まずほとんどの学生は、ARLISSに向けたCanSat開発に加わってシステム設計を体得し、並行して自分の研究テーマを模索していきます。
CanSat開発は、思いどおりに進まないことの連続です。試験の直前に機器が壊れる、現地でトラブルが起きるなど、実際に手を動かすからこそ直面する問題に向き合う中で、粘り強く取り組む姿勢や、気になったことをためらわずに共有する習慣が自然と身に付いていきます。複数人でひとつのものを作り上げる経験を通じて、プロジェクトマネジメントの力も養われます。

Q.アメリカでの打ち上げミッション「ARLISS」について、具体的にどのようなことを学べますか?

ARLISS(A Rocket Launch for International Student Satellites)は、学生が開発した模擬人工衛星「CanSat」をロケットに搭載し、アメリカ・ネバダ州の砂漠から打ち上げる競技大会です。4月頃から開発を始め、8月の最終審査を経て9月に本番を迎えます。
実際の打上げや運用を想定し、あえて厳しい条件で試験を重ねながら設計を詰めていく過程は、机上の計算だけでは得られない学びの連続です。現地では気候や時差、交通ルールの違いなど、日本では経験できない環境にも適応しなければなりません。うまくいかないことも多いからこそ、チームでの気付きの共有や、粘り強くやり抜く力が育まれる貴重な機会になっています。

佐原研究室
もっと詳しく知りたい方はこちら▶ https://ssl.fpark.tmu.ac.jp/

軌道上のごみ問題解決に向けた、
衛星に搭載するモジュールの研究を進めています。

私の研究 佐原 宏典 教授

現在、もっとも力を入れているのが、運用を終えた人工衛星を安全に軌道から離脱させたり、衛星同士の衝突を避けたりするためのモジュールやアルゴリズムの研究です。宇宙ごみは年々増え続けており、低軌道上では衝突のリスクが現実のものになりつつあります。この課題は一つの大学だけで解決できるものではないため、国連の会議にオブザーバーとして参加するなど、国際的なコミュニティの中で研究成果を社会実装につなげる活動にも力を入れています。学生時代、図鑑や科学番組に胸を躍らせていた「宇宙へのロマン」は、今では試験や書類仕事の連続する地道な現実に姿を変えました。それでも、遠い天体に思いを馳せる瞬間には、子どもの頃と変わらない高揚感を覚えます。

壊さない、迷わない、汚さない。
私たちが目指すのは“使い続けられる宇宙”です。

私の研究 student

左から

システムデザイン研究科 航空宇宙システム工学域 博士後期課程 3年
伊藤 将太さん
「データ駆動型手法を用いた月周辺の軌道設計」
システムデザイン研究科 航空宇宙システム工学域 博士前期課程 2年
宮尾 芽留さん
「宇宙交通管理に向けた衛星衝突回避システムの研究」
システムデザイン研究科 航空宇宙システム工学域 博士後期課程 3年
白井 健太郎さん
「打上げ振動から搭載機器を守る構造設計」

衛星の“壊れ方”を知り尽くす、構造からのアプローチ

佐原研究室を選んだ理由を教えてください。

白井さん
白井さん
衛星は、振動だけでなく熱や放射線から内部の機器を守るなど、さまざまな課題を抱えています。その中で、これまで自分が得意としてきた力学の知識を生かせる分野として、打上げ時の振動から搭載機器を守る構造設計に興味を持ちました。仮説を立てて検証を重ねる、地道なものづくりのプロセスに惹かれ、この研究室を選びました。
伊藤さん
伊藤さん
僕は鹿児島出身ですが、身近な場所(種子島)からロケットが打ち上がる環境で育ったことで宇宙に興味を持ちました。佐原研究室では、増え続ける宇宙ごみの問題に向き合う「宇宙交通管理」という新しい分野に取り組めると知り、まだ答えの定まっていないテーマに挑戦したいと思い選びました。
宮尾さん
宮尾さん
もともと、宇宙そのものよりも「宇宙から人間の暮らしにアプローチする」研究がしたいという思いがありました。地球観測衛星をテーマにできる研究室を探す中で、この研究室であればその思いを実現できると考え選びました。

アメリカの砂漠で学んだ、チームでものをつくる難しさ

ARLISSでの開発を振り返って、印象に残っていることを教えてください。

白井さん
白井さん
開発は4月頃から始まり、8月末の最終審査を経て9月に本番を迎えます。実際の打上げやミッション運用を想定し、あえて厳しい条件で試験を重ねながら設計を進めていくため、その過程はとても大変でした。現地では乾燥した気候や時差、生活環境、機材の運搬・運用など、日本と異なる環境に適応しながら活動しなければならず、日本では問題なくできていたことが現地で思わぬミスにつながることもありました。総じてタフさを求められる経験でしたが、その分、大きな学びになったと思います。
伊藤さん
伊藤さん
僕は、別のロケットコンテストに参加した際、チームで一つのものを作り上げる難しさを実感しました。プログラム担当、機体担当と役割が分かれる中で、1つの目的を達成するために、お互いの要求と制約を出し合いながら調整する必要があります。ここが変わればあちらも変わる、という感覚は、実際にチーム開発を経験して初めて得られるもので、将来エンジニアとして働くうえでも欠かせない実感だと思います。
宮尾さん
宮尾さん
私は開発そのものよりも、チームの雰囲気づくりの大切さを学びました。以前は、同じテーマに取り組む学生が他におらず、先生と2人で議論する時間がほとんどでしたが、伊藤さんが加わってからは、定例のミーティングを提案してくれるなど、意見交換できる環境が生まれました。一人で抱え込まずに相談できることのありがたさを実感しています。

佐原研究室だからこそ、遠慮なく声を上げられる

最後に改めて研究室の魅力を教えてください。

白井さん
白井さん
佐原先生は学生と同じ部屋で過ごすことが多く、他の研究室と比べても学生と教員の距離が近い研究室です。コミュニケーションの機会も多く、気になったことをすぐに相談できる距離の近さは、この研究室ならではの魅力だと思います。
伊藤さん
伊藤さん
研究テーマはメンバーごとにバラバラですが、会話量がとても多い研究室です。専門が違うからこそ、話しているだけで新しい視点や発想に気付くことも多く、日々刺激をもらっています。
宮尾さん
宮尾さん
OB・OGとのつながりが強いことも魅力です。卒業後も相談できる先輩が多く、進路を考えるうえでも心強い存在になっています。
賀川 敦也さん

※学生の所属・学年は取材時(2026年7月)のものです。

先生からのコメント
佐原 宏典 教授

宇宙工学というと敷居が高く感じるかもしれませんが、研究室で最も大切なのは専門知識よりも「宇宙が好きだ」「宇宙を学びたい」という気持ちです。高校で学ぶあらゆる科目や経験が、将来、自分の研究に役立つ可能性があります。ぜひ、若いうちに幅広くさまざまなことを経験し、挑戦してください。ものづくりの経験を通じて、粘り強く考え抜く力や仲間と協力して課題を解決する力を育みながら、宇宙への夢を追い続ける方を、これからも歓迎しています。

総合HP教員紹介ページ/
システムデザイン学部 航空宇宙システム工学科 教授 佐原 宏典(さはら ひろのり)

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