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2026.04.23
特集 Vol.10 特別企画

博士後期課程学生対談

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研究者の人材育成に力を入れる東京都立大学は、博士後期課程の学生支援を持続的に拡充し、経済的支援やキャリア支援など充実したプログラムを推進しています。
今回は、博士後期課程で研究に邁進する2名の対談を通じて、都立大の博士後期課程の魅力をお届けいたします。

キービジュアル
岩本 萌愛(いわもと もあ)さん
岩本 萌愛(いわもと もあ)さん

人文科学研究科 社会行動学専攻 社会学分野、博士後期課程1年。白神山地の保全と地域社会の関係のあり方の研究に取り組む。学振特別研究員DC1、みやこMIRAIプロジェクト区分2の支援を受ける。

河村 隆生(かわむら たかお)さん
河村 隆生(かわむら たかお)さん

システムデザイン研究科 システムデザイン専攻 情報科学域、博士後期課程3年。音から周囲の環境を認識する研究に取り組む。学振特別研究員DC2、みやこMIRAIプロジェクト区分2の支援を受ける。

音と環境、自然と人 それぞれの研究への道

まずはお二人の研究内容と、博士後期課程への進学を決めた理由を教えてください。

河村さん
河村さん
私は音から周囲の環境を認識する環境音認識の研究に取り組んでいます。パソコンを用いたデータ解析を行い、音が収録された場所や状況を認識する技術を開発しています。応用分野としては高齢者や乳幼児の見守り、生活ログの自動生成などが考えられます。もともと人間の五感、特に聴覚に関心があり、高専時代にこの研究を始めました。
進学を決めたのは、高専時代のインターンシップで現在の研究室のレベルの高さに惹かれたことがきっかけです。インターンシップ2ヶ月間の成果を国際会議で発表する経験もでき、「もっと研究を深めたい」と強く思い、都立大に進学しました。博士前期課程を経て研究が面白くなってきたタイミングで、「人生の中で博士号を取得したい」という目標もあり進学を決めました。
岩本さん
岩本さん
私は白神山地をフィールドとして、周辺住民と自然の関係性がいかに構築されてきたのかを社会史的な視点から研究しています。環境社会学・地域社会学を専攻分野として、環境の保全と過疎化・人口減少といった社会問題の両立を考察しています。もともと文化財に興味があり、世界自然遺産に登録された白神山地の生活文化や歴史にも関心があります。
白神山地を選んだ理由は、都立大の学部在学中、卒業論文執筆時に指導教員の勧めで訪れた際、地域の魅力に惹かれたからです。博士前期課程では他大学で文化財科学を学びましたが、その間も都立大の社会調査実習に参加して白神山地の調査を継続していました。研究成果をその地域に還元したいという思いから、博士後期課程では再び都立大への進学を選びました。

充実した支援制度が研究を支える

都立大の支援制度について教えてください。

河村さん
河村さん
学振特別研究員(※1)(DC2)とみやこMIRAIプロジェクト(※2)区分2の支援を受けており、これら2つの制度によって生活面の負担が軽減され、研究に集中できる環境が整っています。博士後期課程進学時には都立大の「双対型」人材育成フェローシップ事業(現:領域リフレーミング双対型博士人材育成プロジェクトSPRING※3)に採用され、支援を受けられたことは大きな助けとなりました。その後、学振特別研究員(DC2)に採用されましたが、学振特別研究員以外の学生にも独自の経済的支援制度があるのは、本当に心強いと思います。
岩本さん
岩本さん
学振特別研究員(DC1)に採用されなければ進学を躊躇するほど、経済面は重要でした。学部時代から都立大の博士後期課程は支援が充実していることを知っており、それが進学先を選ぶ大きな理由になりました。博士前期課程で在籍していた大学では博士後期課程学生への支援がほとんどなく、多くの学生が働きながら研究活動をしていたため、都立大の環境はとても恵まれていると感じます。

学振特別研究員の申請はどのように進めましたか。

岩本さん
岩本さん
学振特別研究員(DC1)は3年間の研究計画と研究遂行能力を示す申請書を作成する必要があり、近年では採用率が15%を下回るなど(※)非常に厳しいものです。私が所属する社会学分野では有志の学生で学振特別研究員の申請書内容を検討する機会を設けています。学振特別研究員に採用された先輩方のノウハウが蓄積され、後輩に引き継がれているのも大きな強みです。
※2025年度日本学術振興会新規採用率の公表値による
河村さん
河村さん
学振特別研究員に採用されている研究室の先輩からアドバイスをいただきました。また、 都立大の総合研究推進機構による学振特別研究員申請書の書き方講座や添削支援が充実しており、申請時から手厚いサポートが受けられ、研究者支援の体制が整っていると感じました。

博士号の意義

博士号の意義について、どうお考えですか。

岩本さん
岩本さん
地域に入って住民に話を聞くこと自体は、誠意をもって地域と向き合っていれば学部生にもできます。しかし具体的な政策提言も含め、研究成果を社会に発信・還元していくには、博士号を取得するまでの経験と蓄積が必要になると思います。それらは、長期に渡り誠実に地域との関係を構築することで得られる知識や、地域の方々からの信頼など、研究していく中で形成されていくものです。
まただからこそ、研究者は自身の発言の重みを自覚し、責任をもつ必要があると考えています。博士号はこのように長期間研究し続けて培った実力の証だと思います。
河村さん
河村さん
博士前期課程でも専門分野に必要な技術力や研究手法が身に付きますが、問題発見から研究を完成させる能力は、博士後期課程で自身の研究テーマと向き合い続けることで培われていくと考えています。AI時代において、自ら問題を発見し解決策を創出する能力こそが重要になってくると思います。

今後の目標やキャリアについてはどうお考えですか。

河村さん
河村さん
まずは博士号を取得することが目標です。その後は、自分の研究を社会実装につなげていきたいと考えています。高齢者の見守りなど、実際に人々の生活に役立つ技術として展開できれば理想的ですね。
岩本さん
岩本さん
2025年度から博士後期課程学生として都立大で研究を続けることができるようになりました。研究成果を地域に還元しながら、白神山地の魅力を広く社会に発信し、社会課題と向き合っていきたいです。

最後に、博士後期課程進学を考えている学生へメッセージをお願いします。

河村さん
河村さん
学部3年から就職活動が始まって、研究の面白さに気付く前に就職活動が終わってしまう学生も多いと思います。卒業論文を書き始めてから研究の楽しさに気付く人もいるはずです。大学で学ぶ意味がわかってきた頃に卒業するというのは、本当にもったいない。都立大には研究に集中できる環境が整っているので、研究に興味がある人はぜひチャレンジしてほしいですね。
岩本さん
岩本さん
人生100年時代において、20代で数年かけて学ぶことは長期的な投資になります。経済的な不安があるかもしれませんが、都立大は支援制度が本当に充実していて、博士後期課程の学生を本気で支援する環境があります。博士後期課程での学びは、その後の長い人生で必ず活きてくると信じています。
※記載の支援内容は全て取材時(2026年1月)のものです。
リトリートで得た異分野交流の刺激

都立大の博士後期課程学生支援プロジェクトでは、キャリア形成に役立つ多様なトランスファラブルスキルプログラムを提供しています。今回はその中でも、日常から離れた環境で研究や将来、社会との関わりを振り返る「リトリート」を紹介します。
リトリートは、合宿型のプログラムで、共同生活やフィールドワーク、討論、エクスカーションなどを通して多様な価値観に触れ、新たな視点を得ることを目的としています。普段の研究室とは異なる環境に身を置くことで、思考を整理し、研究者としてのモチベーションや方向性を再確認するきっかけにもなります。開催場所は御岳山の宿坊や熱海など、年度ごとにさまざま。参加者は博士後期課程の学生や研究者が中心で、専門分野を越えた交流が生まれることも魅力のひとつです。

博士後期課程学生支援プロジェクトのリトリートプログラムに参加されたそうですね。

河村さん
河村さん
リトリートは自分の研究に対する視野を広げる貴重な時間でした。普段は研究室やリモートで作業していて自由度が高い環境なのですが、基本的にはパソコンに向き合う時間が長く視野が狭くなりがちです。リトリートでは他の専攻の学生たちと一緒に過ごすことで新しい刺激を受けました。
特に印象的だったのは、岩本さんのようにフィールドワークを中心とした研究スタイルの人の話を聞けたことです。私はパソコンでのデータ解析が中心の研究なので、まったく違うアプローチに触れることができました。異なる分野の研究手法を知ることで、自分の研究にも新しい視点が生まれました。
岩本さん
岩本さん
私にとっても大きな転機になりました。2025年のリトリートは筑波で実施されたのですが、1日目はまず筑波山を訪れて、その後ホテルでポスター発表、参加者同士でフィードバックし合いました。2日目には国立環境研究所を訪問し、第一線で活躍されている研究者の方々からのお話を伺う機会もありました。温泉もあって、リフレッシュできました。
博士後期課程1年という、これから本格的に研究を進めていく段階で参加できたのは幸運でした。私以外は全員理工系の学生だったのですが、数値データやモデリングで論拠を示していく手法に触れ、自分の研究にも数値的な根拠付けを取り入れてみたいと考えるようになりました。同じ回に参加した河村さんとは学年や分野が異なるため、より社会への波及効果を意識した研究に対する姿勢や工学系ならではの考え方の違いを感じることができました。

リトリート参加前と参加後で、何か変化はありましたか。

岩本さん
岩本さん
研究への向き合い方が変わりました。普段は自分の研究テーマに没頭していますが、リトリートで他分野の学生と交流することにより、自分の研究を客観的に見る視点を得られました。専門用語を使わずに研究の意義を説明する練習にもなりましたね。これは今後、研究成果を地域に還元していく際にも役立つスキルだと感じています。
河村さん
河村さん
そうですね。学会では同じ分野の研究者と交流することが多いので、リトリートで人社系・理工系を問わず様々な学生と話せたことが新鮮でした。コロナ禍後に学会へ対面参加して研究コミュニティの魅力を感じていましたが、リトリートはそれをさらに広げてくれる場所です。異分野の視点を得ることで、自分の研究の社会的意義をより深く考えられるようになりました。
※1 学振特別研究員

独立行政法人日本学術振興会特別研究員制度。国が実施しているもの。特別研究員制度は、我が国の優れた若手研究者に対して、自由な発想のもとに主体的に研究課題等を選びながら研究に専念する機会を与え、研究者の養成・確保を図る制度です。DC1・DC2・PD等、特別研究員としての区分に応じて研究奨励金(生活費相当額)月額20万円(DC)のほか、特別研究員奨励費(科研費。最大450万円)が支給されます。

※2 みやこMIRAIプロジェクト

みやこMIRAI(Motivating Integrated young Researchers towards Adaptive intelligence Initiative:MIRAI)プロジェクトは、本学の独自支援。一定の資格要件を満たす博士後期課程の学生を対象に、年額240万円の研究奨励費の支給及び研究費として年額30万円(上限)を措置するほか、授業料免除などの支援を行うことで、研究に専念できる環境を整備することを目的としています(区分1支援)。さらに、2年次以降に日本学術振興会特別研究員(DC)に採用された学生や、これと同等の優れた研究業績を有する学生には追加の給付を行い、授業料免除と合わせることで同世代の社会人と同水準の経済的支援を提供します(区分2支援)。また、研究インターンシップなどのキャリア形成支援も実施します。

※3 東京都立大学 領域リフレーミング(Arena Reframing:AR)
双対型博士人材育成プロジェクト

東京都立大学「領域リフレーミング(Arena Reframing:AR)双対型博士人材育成プロジェクト」は、国の助成を受けて本学が実施しているプロジェクトです。既存の学問分野の枠にとらわれず、多様な知を組み合わせて新しい研究領域(アリーナ)を創り出すことのできる博士人材の育成を目的としています。ARとは、主専門分野に多分野の視点を取り入れて学問領域を再構成し、新たな洞察やイノベーションを生み出すための考え方です。本プロジェクトでは、研究に専念できる経済的支援(生活費相当額・年額240万円及び研究費年額30万円~)を提供するとともに、キャリア形成を支援する多様なプログラムを実施しています。

総合研究推進機構 博士人材支援室
https://research-miyacology.tmu.ac.jp/human-resources-support/

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