福元 翔輝さん(明星学園中学校 教員)
本学を卒業し、社会で活躍する先輩の皆さんにお話を伺うシリーズ企画「卒業生は今…!」。在学時代の学びや学生生活、大学での経験と今のご自身とのつながりなどを紹介します。


福元 翔輝(ふくもと しょうき)
首都大学東京都市教養学部都市教養学科理工学系物理学コース(当時)卒業。学生時代から中学教師を目指し、大学を卒業後は私立明星学園中学校の教員として勤務。24時間マラソンのランナーとしても活躍し、2025年10月には「2025 IAU 24時間走世界選手権」に日本代表選手として出場。
理系と教職、
二つの道に挑んだ4年間が教えてくれたこと
高校時代から陸上競技で活躍されていたそうですが、なぜ都立大への進学を決められたのでしょうか。
都立大を志望したのは、理工学を専門的に学びながら教職課程も履修できる環境が整っていたこと、そして高校陸上部の先輩2人が在学していたことが大きな理由です。もともと教員を目指していましたが、教員養成専門の大学では進路や学びの内容が教職に関連したものに限られてしまうため、物足りなさを感じていたからです。理科が好きだったこともあり、理工学をより体系的に、そして深く追究できる大学を探していたのです。
ちょうどその頃、首都大学東京(当時)に進学して理系を専攻し、陸上競技部でも活躍していた先輩から話を聞く機会がありました。大学で教職と理系の学びを本当に両立できるのか、不安がありましたが、先輩が実際に4年間の学生生活をやり遂げている姿を目にし、安心することができました。理系分野で専門知識を磨いた上で教員になれば、教育現場で活かせる多様な視点を持てるのではと考え、都立大を第一志望に決めました。
教員を志すようになったきっかけと、現在の仕事のやりがいを教えてください。
教員を目指した背景には、父をはじめ家族に教員が多かったことがあります。父に加え、2人のおじが教員という環境の中で育ち、自然と父の背中を追うようになりました。中でも中学校教員を志したのは、中学生という時期が生徒にとって大きな分岐点であり、教員から受ける影響が最も大きいと考えたからです。
現在の仕事のやりがいは、やはり生徒の成長に直接的・間接的に関われる点にあります。特に、卒業した教え子が教育実習生として母校に戻ってきてくれた時には、教員として大きな喜びを感じました。指導においては生徒を頭ごなしに否定せず、のびのびと取り組ませることを大切にしています。また、自身の経験を踏まえて指導内容を伝えることで説得力を持たせるように努め、時には自らを反面教師として示すこともあります。生徒の成長を間近に見守り、その過程に携われることこそ、教員という仕事の最大のやりがいだと感じています。
大学で学んだことは、現在の仕事にどのように活きていますか?
現在勤めている学校では、中学3年生を対象に「卒業研究」という授業があり、生徒が自分の関心のあるテーマを調べ、パワーポイントで発表します。こうした場面で、理工学系の専門知識が役立っていると感じます。理科好きの生徒は興味関心を本当に深く追究するため、生徒からの質問に対して、大学時代のテキストを引っ張り出して回答することもあります。教職だけでなく、4年間を通じて理科を専門的に学んだ経験があるからこそ、子どもたちの多様な疑問に応えられる幅広い引き出しを持つことができていると感じています。
教員としてもランナーとしても。
挑戦し続ける姿勢を貫きたい

教員になってからランナーとして復帰されたのは、なぜですか?
教員3年目の頃に本格的に競技へ復帰したのは、陸上部の顧問として生徒の成長を見守る中で「自分も負けていられない」と感じたからです。生徒たちが真剣に練習に取り組み、競技者として活躍する姿を目の当たりにし、口だけで指導するのではなく、自ら走る姿を示して背中で引っ張る必要があると考えました。高校時代には陸上に対して燃え尽きた感覚がありましたが、大学4年間は思うように走れず、やり残した気持ちも心の片隅にありました。だからこそ、競技をもう一度突き詰めてみようと、ランナーとして復帰したのです。
また、数ある競技の中でも24時間マラソンに挑戦したのは、担任をしていた生徒たちの卒業を前に、教師として何か大きな挑戦をする姿を示して送り出したいと思ったからです。1回目の24時間マラソンは走り切ることができませんでしたが、それがかえって原動力となり、2回目の挑戦で成功を収めることができました。自分自身が挑戦し続ける姿勢を示すことで、生徒たちに何かを感じ取ってもらえれば嬉しく思います。

今後の夢や目標をお聞かせください。
ランナーとしては、1日でも長く走り続けることです。生徒の前で競技に挑戦する姿を見せている以上、その姿勢をなるべく長く保ち続けたいと考えています。教員としては、こちらから一方的にはたらきかけるのではなく、私の言動から生徒が自ら何かを感じ取ってくれるような存在でありたいと思っています。現在は教務部長という立場でもあり、先生方の声を丁寧に受け止め、時間割作成や管理システムの導入などより良い学校運営に関わっていけたらと考えています。
読者へのメッセージをお願いします。
都立大には理系・教職のいずれにおいても熱心に指導してくださる先生方が多くいらっしゃいます。先生方には授業や研究室などで常に真剣に向き合っていただいたことを、とてもありがたく感じています。振り返れば、私にとって都立大での4年間は、自分の進むべき道を見つける時間でした。教員を志しながら理工学にも惹かれていましたが、専門分野を追究する仲間のすごさを間近で感じつつ、その学びを教員としてどう活かしていくかという、自分なりの方向性を見出すことができました。
現在は、かつての教え子が都立大に在学しており、来年には教育実習で明星学園中学校に戻ってくる予定です。卒業後もこのように人と人とをつなげ、刺激を与えてくれる大学であることを実感しています。ぜひ皆さんも都立大で、自分自身の可能性を大きく広げてください。