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2024.07.31
都立大生をフカボリ! Vol.1

海老澤 元さん(システムデザイン学部インダストリアルアート学科)

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学業と課外活動を両立し、活躍する学生を取り上げるシリーズ企画。第1回目は、インダストリアルアートを学びながら独自に3DCGによる映像制作を行い、CGアーティストとしても活躍するシステムデザイン学部の海老澤元さんを取材しました。CGに出会いわずか1年ほどでトリプル受賞を果たした猫をモチーフとした受賞作品への思いや、現在の制作活動について伺います。

キービジュアル
海老澤 元

海老澤 元
システムデザイン学部インダストリアルアート学科4年
私立 青雲高等学校(長崎県)出身

大学の課題で出会ったCG制作に魅せられて

CG制作にのめり込んだきっかけは何でしたか?

 CGとの出会いは、大学2年次に受講した専門教育科目「トランスポーテーションデザイン基礎」であり、モビリティのイメージを制作する課題制作時にCGにチャレンジしようとしたことです。それまでは触れたことがありませんでした。ただ、高校時代に美術部に属していて、クリエイティブなものづくりに興味があったことと、CG制作のハードルが想像以上に低かったことものめり込んだ理由かもしれません。

海老澤さんが大学入学後初めて作成した3DCGモデル
海老澤さんが大学入学後初めて作成した3DCGモデル。「トランスポーテーションデザイン基礎」という授業の課題として提出した。

CG制作の魅力を教えてください。

 例えば、ものをつくる・描くだけでなく、炎の動きをシミュレーションして、計算どおりリアルに形づくることができる。人が想像できるものなら、どのようなものでも創造することができる自由さと、多様さが魅力で、あっという間に夢中になってしまいました。
 CG制作は難しいと思われがちですが、意外に誰でも手軽に始められます。わかりやすいところでいうと、アメリカのアカデミー賞で視覚効果賞を受賞した「ゴジラ-1.0」の海の演出で使われているHoudini(フーディニ)という3DCG制作専用のソフトウェアは、僕も使っているものです。経験や技術はともあれ、実は使用しているソフトはプロもアマチュアも同じであるなど、CG制作にとりかかること自体は意外と身近なものなのです。

受賞作品はどのように制作されたのでしょうか?

 「八王子学生CMコンテスト」で「八王子市長賞」を受賞した『ニャンて素敵な街、八王子。』は、大好きな八王子の街並み、高尾山や浅川を舞台に、八王子の日常風景をファンタジーの世界観とVFX技術で表現しました。この作品が、同時期に開催された「関東デジタルコンテンツ・アワード2023」の「関東総合通信局長賞」も受賞しました。
 一方、『Meow Sky』は、IndyZone主催の「第2回 チャレンジUSD コンテスト2023」で「審査員奨励賞」を受賞させていただきました。『ニャンて素敵な街、八王子。』と同じ素材を使い、Pixar社が開発した3Dグラフィックに関するUSDファイル形式を使用して制作しました。最新技術の導入にチャレンジしたこの作品で、評価いただけたことを非常に光栄に思っています。
 制作期間は3週間ほどで、撮影からCGモデリング、実写合成や動画編集など、毎日、大学の研究室にこもって作業をしていました。先生方や周りの皆も学外のコンテストに応募することを応援・サポートしてくれますし、感謝しかありません。受賞が結果の全てではありませんが、いろんな人からの評価を実感でき、大きな自信と次回作へのモチベーションにつながりました。

『ニャンて素敵な街、八王子。』の一場面
「八王子市長賞」を受賞した『ニャンて素敵な街、八王子。』の一場面。

▼作品は以下よりご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=8ChuyRR9J7A&t=1s

快適に制作に没頭できる素晴らしい作業環境

制作を進める上で感じたことはありますか?

 私が所属する映像デザインスタジオの研究室は、とにかく、制作環境が整っていて、作業がしやすく快適でした。研究を深め合える仲間もいて、非常に居心地が良かったです。
 CG制作は誰でも気軽に始めやすいことは確かですが、機材や専用のソフトウェアがないと制作ができませんし、それらを充実させるためにはかなりの費用がかかります。また、僕が寮生活を送っていることもあり、1人で作業に集中する環境もなかなか作れなかったので、様々な面で、研究室の制作環境は素晴らしかったです。
 都立大は緑が多く、施設もきれいで、研究環境は最高です。

日野キャンパスで立ち上げた学生団体について教えてください。

 「REDSKILL Lab. (レッドスキルラボ)」という、視覚効果を研究する学生主体の研究チームです。僕自身の経験値を上げるためにも、1人で制作していくには限界があるので、僕と同じインダストリアルアート学科や、情報科学科など他学科の学生を巻き込んでグループで活動できるように、と立ち上げました。VFXからゲーム制作まで、CGが活用できるあらゆる分野で幅広く活動しています。
 最近は、インタラクティブアートといわれる、観客を巻き込んでアートを成立させる作品をつくろうとしています。有名な「チームラボ」の作品のように、人が触れることで反応したり変化したりして、それが新たなアートを生むというような作品をつくりたいですね。

「REDSKILL Lab.」活動風景
「REDSKILL Lab.」活動風景

都立大を目指したのは、アートと工学の可能性を広く学ぶため

都立大を志望した理由は何でしょうか?

 高校時代は絵を描くのが好きだったので、芸術系の学科に進学しようと考えていました。実は、当時第1志望の大学に落ちてしまい、1年浪人している間に、都立大のインダストリアルアート学科に出会ったのです。他の大学にはない、アート(芸術)と工学の両分野を研究できると知り、昔から絵を描くことにも、パソコンのしくみや組み立てにも興味があった自分にピッタリだと思いました。中学と高校は6年間寮生活を送っていて、勉強中心の生活をしていたので、自由に好きなことを探求できる大学の環境が新鮮で楽しく、世界が広がったように感じています。これからも興味のあることには何でもチャレンジしたいと思っています。

今後の目標、目指していることはありますか?

 僕が制作したドローンを使ったシミュレーター映像(研究)が「SIGGRAPH2024」Posterの審査に通ったので、今年の夏に中安翌教授、串山久美子教授、博士前期課程1年次の青木裕作さんとともにSIGGRAPH国際会議で発表することになりました。アメリカのデンバーで開催される世界最大のCG学会であり、CG制作に関わる世界中の技術者が注目する国際会議なので、非常に楽しみでワクワクしています。
 今までは、「どのような作品を制作するか」というクリエイティブな活動に重きを置いていたのですが、研究発表の機会を得て、CGを制作するためのシステムやソフトウェアを深堀りするような研究にも興味を持つようになりました。学部卒業後は、大学院に進学して研究を深め、将来は仮想現実を宇宙開発に生かすことができる仕事に就きたいと思っています。

受験生へメッセージ

 都立大は専門分野が幅広く、学科を越えた交流も盛んで、多様な学びが得られる大学です。今は日野キャンパスで学科の専門教育科目をメインに学んでいますが、1・2年次は、南大沢キャンパスで開講される様々な分野の教養科目も幅広く学んでいたので、専門分野以外にも興味のある分野の視野を広げることができました。また学生生活では、国際学生宿舎で留学生をサポートするレジデント・アシスタントの活動をしたことで、グローバルな価値観に触れることもできました。
 そして、僕が所属するインダストリアルアート学科では、映像デザインやインタラクティブアート、空間デザインやインテリアデザインなど、「アート・デザイン」と「人間工学」にまたがる分野を広く学ぶことができます。アートを研究として扱うことができるのがこの学科ならではであり、美術系の大学で作品をつくることとはまた違った魅力や面白さがあると思っています。多様な専門分野に特化した先生方の下で学ぶことができるので、とても刺激が多いです。幅広く学んで自分を成長させたい方、専門分野の知識を深めたい方、どちらの方にも都立大の環境はおすすめです。
 また、私自身、勉強に強い苦手意識を持っており、模試の成績も奮わず、受験勉強では何度も挫折しました。しかし、こうした状況にある受験生こそ諦めずに挑んでほしいと思っています。国語や数学だけが勉強ではありません。インダストリアルアート学科では学生の秘めた感性を引き出してくれます。ぜひ都立大で一緒に学びましょう。

受賞歴

●2023年(3年次)
「第24回テレワーク推進賞PR動画コンテスト」 優秀賞/「動画変造コンテスト!! with 逗子ドローンクラブ」審査員賞(池 亜佐美)/「クールジャパン動画制作コンテスト」 グランプリ

●2024年(3年次)
「八王子学生CMコンテスト」 八王子市長賞/「第2回 チャレンジ USD コンテスト2023」 審査員奨励賞/「関東デジタルコンテンツ・アワード2023」 関東総合通信局長賞

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