東京都立大公式WEBマガジン
2024.01.31
授業潜入レポート Vol.4

システムデザイン学部情報科学科 専門教育科目群 領域導入科目 “情報科学概論2”

この記事を共有する

大学での授業スタイルは高校までとは大きく異なりますが、実際にイメージするのは難しいかもしれません。そこで今回は、システムデザイン学部情報科学科の学びの基盤となる領域導入科目「情報科学概論1」「情報科学概論2」「情報科学概論3」のうち、2に潜入。担当教員の下川原先生と同学科1年次の学生さんに、授業内容や魅力を聞きました。

キービジュアル
授業の様子

人間は何をどう感じ、どう思考するのか

下川原 英理 准教授
システムデザイン学部 下川原 英理 准教授

東京都立科学技術大学大学院工学研究科システム基礎工学専攻博士後期課程修了、博士(工学)。東京都立大学システムデザイン学部情報科学科助教を経て現職。

Q.この科目で扱うテーマや目的を教えてください。

 「情報科学概論2」は、3名の教員が「人工知能」「ヒューマン・コンピュータ・インタラクション」「感性工学」を分担し、1人1テーマで4回ずつ講義を行う1年次向けの必修科目です。人間は何をどう感じ、どう思考するのかを情報科学や計算機科学の視点で学び、技術的な内容のほか、「人間を知ること」を重視しています。
 私が担当する「人工知能」では、ChatGPTのような生成AIをはじめ、世間で注目されているトピックにも触れますが、決して「すごい技術だね」で終わらせることはありません。ブラックボックスともいわれる機械学習がどのように結果を導き出すのか、その裏側を含めて学んでいきます。
 大きな目的は、便利だからと生成AIを使っているものの、そのしくみを理解していない学生の知的好奇心を刺激すること。情報科学を学ぶ学生は、1年次にプログラミングの基礎を修得する必要があるため、学生のモチベーションアップを目指しています。そして、2年次以降の専門科目や3年次のゼミ(「情報科学ゼミナール」)、さらには4年次に研究室で挑戦したいテーマなど、この授業を大学4年間や将来に向けた目標設定の足掛かりにしてほしいと考えています。

Q.先生の授業では、具体的にどんな内容を学べますか?

 人工知能による正解率が99%だとしても、それで本当に良い機械学習といえるのかを考えてみてください。例えば「癌の確率を99%の高精度で判定!」といったサービスがあった場合でも、癌ではないのに癌であると誤って判定されることもある一方で、最も問題なのは、本当は癌であるのに癌ではないと判定されてしまう可能性があることです。
 要は人工知能の性能を示す指標は正解率だけではなく、誤答率や再現率、適合率なども重要だということ。利用する際には機械学習の基になるデータの分布や目的に応じた注意が必要ですし、開発や運用を行う立場であれば、どの機能を高めて精緻化すべきかを熟慮して設計しなければいけないのです。
 また、フェイク動画やフェイクニュースが増えつつある実情を踏まえ、日本で検討されている規制の内容やAI倫理なども授業で紹介します。とはいえ、負の側面ばかりに焦点を当てるのではなく、AIを活用するメリットを高めるにはどうすればいいのかを、学生と一緒に考えていきたいと思っています。

Q.学生はどんな気付きを得られるでしょうか?

 どこまで人工知能に頼り、どこまで人間が担うべきなのかという議論は盛んですが、AIは人間が思いつかないパターンを発見する可能性がゼロではないため、AIの考えを参考にすることで、人間も進化していけるのかもしれません。ただし機械学習は、言わば蓄積された過去のデータを基に、データの中から規則性を見つけ出し情報を提示するものです。目的に合わせてAIを利用するためには、基になるデータや手法を人間が適切に選定する必要があります。機械学習において具体的に過去の何のデータが知識として使われているのかということを注意深く確認すべきであり、人間が主体的に理解するためのヒントであると捉えるべきでしょう。そうした意味でも「あくまでも未来をつくるのは人間である」と私は考えています。
 このことは情報科学に限らず、様々な学問分野においてクリティカル・シンキングが重要視されていることとも類似しています。教科書や一授業の内容を鵜呑みにせず、自分なりに咀嚼することが大切で、日々の学修で自分の中に蓄積されてきた知識をいかに活用するかが肝心なのです。この授業では、人工知能の基礎や歴史を学びながら、身近に存在するAIとの望ましい付き合い方や活用方法をわかりやすい事例をもって考えていきますので、新たな発見と気付きの多い授業になるはずです。

受講した学生にお話を伺いました

システムデザイン学部 情報科学科1年 Kさん(神奈川県川崎市立川崎高等学校出身)
Kさん

学生の身近に存在するAIへの意識を変化、そして向上させる1年次向けの必修授業。
この授業を受講する1年生のKさんに受講した印象を伺いました。

Q.「情報科学概論2」を受講した印象を教えてください。

 私は対戦ゲームなどでコンピューターが自動的にキャラクターを動かすしくみに興味があり、同様のしくみをつくるためのプログラミングを学ぼうと情報科学科を選びました。入学後、基盤科目の「情報科学入門」や、機械学習をテーマとしたクラスで「基礎ゼミナール」を受講していたので、「情報科学概論2」もシラバスを読んだときから楽しみでした。多少の予備知識を得ていたとはいえ、想像以上に新発見の連続で充実感があります。AIは世界をどう認識するのか、世界がどう見えているのかという点にも興味が生まれ、今後は画像認識や空間認識なども専門的に学んでいきたいと考えています。

Q.この科目をはじめ学科全体の難易度は?

 高校時代に簡単なゲームをつくった経験がありましたが、専門的なことのほとんどは大学入学後に学びました。私は数学に苦手意識があるのですが、それでも人工知能などへの興味が上回って入学しました。好きなら飛び込んでしまえば何とかなりますし、先生方もわかりやすく説明してくださいます。多少難しくても、落ち着いて資料を見返せば理解できることばかりです。

取材を終えて(2023年11月6日の講義に潜入!)

多角的な視点で情報社会を考える授業

取材を終えて
「AIが導き出した情報を鵜呑みにしてはならない」「子どもが自分で考える力を低下させかねない」といった人工知能の問題点のほか、倫理的課題や法的課題、社会的課題などを丁寧に説明してくれる授業だと感じました。一方で、「人間が物事を判断する際には、無意識な偏ったモノの見方が介在するため、AIに委ねるほうがふさわしい場面がある」との気付きが促されるなど、多角的な視点で講義が進行。講義形式ではあるものの先生からの問い掛けに学生が反応する様子も見られ、学生自ら授業のテーマについて思考をめぐらせる様子が印象的でした。

総合HP教員紹介ページ/
システムデザイン学部 情報科学科 准教授 下川原 英理(しもかわら えり)

TOP