経済経営学部経済経営学科 4年 東 問(ひがし もん)さん
私立桜丘高等学校(三重県)出身
都立大のクイズ研究会「OverDrive」に所属する経済経営学部4年次の東問さんは、高校時代に「全国高等学校クイズ選手権」、通称「高校生クイズ」で優勝し、大学3年次には「abc」という個人戦のクイズ大会で優勝するなど、華々しい戦績を誇ります。「OverDrive」では2022年度に代表を務めるほか、東京大学のクイズ研究会やクイズ王として知られる伊沢拓司氏が率いる「QuizKnock」のメンバーとしても活躍。東さんのクイズに懸ける思いに迫りました。
クイズの問題を通して日々の体験を共有する
都立大への入学を決めた経緯から教えてください。
私は「どうしても競技クイズがしたい、そのために早く大学生になりたい」という思いが強かったので、競技人口が多く、大会が開催されやすい関東圏内、かつクイズ研究会がある大学に志望校を絞っていました。当時、第一志望で受験した東京大学は不合格となり、浪人して東大を目指す選択肢もありましたが、浪人している間クイズ大会に参加ができない時間がもったいなく、受験のタイミングや試験科目が自分に合っていてクイズ研究会が強い大学として都立大を選びました。
都立大は、私が高校生だった2017年と2018年に「EQIDEN」というクイズ大会の団体戦で全国ベスト4まで進んだ実績がありましたし、中学1年生の頃から一緒にクイズをしてきた知り合いが経済経営学部の一学年上にいたことも入学の決め手になりました。入学してみて、高校までは経済や経営に触れる機会はほぼなかったので、大学で専門的に学ぶことができてよかったと思っています。
東さんにとってのクイズの魅力を聞かせてください。
一言では言い表せないのですが、競技クイズを始めて10年、純粋に解くことが楽しいから解いています。現在も部室で早押しクイズをしたり、オンラインでクイズを解いたり、暇さえあれば練習試合をしているような生活です。また、入力(インプット)した知識が増えてきた一方で、問題の切り口は多様なため、入力と出力(アウトプット)の組み合わせが無限にある点にも奥深さと面白さを感じています。
クイズの練習方法を大きく分けると、問題を耳で聞いて早押しして答える練習の「フリバ」(野球のフリーバッティングが由来)と、問題集を読んだり、問題集の内容を単語帳アプリのようなツールに移して解いたりする「座学」の二つに分けることができます。
知識の入力方法は人によって異なり、最近のクイズが強い人の主流は「座学」です。私の場合は、「フリバ」で問題に多く触れることが入力のメインです。知識の定着率を実験で計測したわけではありませんが、多くの人がアプリなどで知識を入力しているとすると、私は効率が良い方なのかもしれません。
クイズを解くだけではなく、問題づくりもされていると聞きました。
自分で大会を開くこともあるため問題を作成する「作問」も行っています。私が目指しているのは、普段よく目にするものを題材にして、問題を聞いたときに「そんな名前だったんだ」「そんな意味があったんだ」という気付きが得られる問題をつくることです。問題を通して、作問者と解答者が日々の体験を共有できる、そんな問題をつくれたらいいなと思っています。そのために日頃からクイズの問題になりそうなネタをメモして、作問しています。ほかにも、著名な人物のあまり知られていないエピソードなどを問題にするなど、少しでも解答者が知っている要素を含んだ問題であることが大事だと思っています。
いわゆるひっかけ問題もありますが、クイズ界では「問題は正解されるために作成されるべきである」という考え方もあります。誰も正解できない問題は、誰も早押しボタンを押せないから出す意味がないということです。これに近い考えを持っている私も、考えるのが楽しくなる問題や、正解できたらうれしいと思える問題づくりを重視しています。
“古豪”とは呼ばせない!“強い都立大”を復活させる
クイズで得た知識は学業でも役立ち、両立させやすいイメージがあります。
クイズで鍛えているから勉強ができるのではとよく言われますが、そうではないと思っています。クイズは、多様な学問領域の知識体系に対して不誠実な向き合い方をしていると考えています。様々な領域のテーマの導入部分を浅く広く聞きかじっているだけであることは否めないからです。さらに私の場合は、両立を語れるほど大学の勉強をした記憶がなく、クイズ最優先の生活を送ってきました。土日はクイズ大会に参加していますし、最近では自分で大会を開いているので、平日もその大会の準備をしています。実は、講義を聞きながら、その内容をもとにその場で作問することもあります。しかし、講義をしっかり聞き、内容を理解できて初めて問題として成立しますので、その科目の試験対策問題を作っているような側面もあると思います。クイズ中心の生活ですが、大学の単位はきちんと取ってきましたので、客観的には両立できているのかもしれません。学生生活には心残りもあります。1年次はコロナ禍だったため、授業は全てオンライン行われました。2年次はオンラインと対面のハイブリッド授業になりましたが、授業などで友人と話す機会が少なかったため、クイズ関係以外の友人が少ないことは残念に思います。
最後に今後の目標を教えてください。
私は中学1年生のときに競技クイズに出会い、中学時代から目標としていた「高校生クイズ」で優勝しました。「abc」(個人戦)での優勝も目標にしていましたが、大学3年次に優勝できたため、個人的な戦績という点では、今後の大きな目標はありません。ただし、大学生のうちに団体戦である「EQIDEN」の予選突破は成し遂げたいと強く思っています。エントリーできるのは大学までですし、所属大学単位での出場になるので、今年がラストチャンスです。私が高校生のときに都立大が「EQIDEN」で決勝に進んだ年以来となる、団体戦での決勝進出を実現させることで、強い都立大を世に知らしめたい。それが、今後のクイズ研究会の活性化にもつながると思っています。
Message
「競技クイズに挑戦したい」という受験生にメッセージをお願いします。
「何から始めたらいいのかわからない」「どうしたら強くなれるのか」とアドバイスを求められることが多いのですが、単純にクイズに向き合う時間を増やせばいいと思っています。クイズでの強さと、人生でクイズに関わってきた時間は比例すると考えているので、クイズで勝ち進めないとしたら理由は明確。対戦相手よりもクイズを解いていないからです。1日24時間のうち、どれだけの時間をクイズに使うのか。競技歴の長いプレーヤーに追いつくことは簡単ではありませんが、いかなるアクティビティよりもクイズの優先順位を上げることが肝心です。
都立大のクイズ研究会には、競技クイズが未経験で入部した学生も多いですし、クイズとの関わり方は自由ですので、まずは気軽にクイズを解いてみて、クイズの楽しさを感じてほしいです。
経済経営学部経済経営学科4年の東さんは、オペレーションズ・リサーチを専門とする山下英明教授のゼミに所属しています。「東くんは超人的」と話す山下教授にゼミの活動内容や、東さんの魅力をお聞きしました。
山下 英明教授 経済経営学部 経済経営学科
上智大学大学院理工学研究科博士後期課程修了。工学博士。専門はオペレーションズ・リサーチ、経営工学。研究テーマは、生産システムや交通システムなどにおける確率モデルの性能評価など。
Q. 先生のご専門やゼミの内容を教えてください。
私の専門は、オペレーションズ・リサーチで、物事の効率化や最適化につなげるための学問です。米国ではマネジメントサイエンスという学問分野があり、日本では直訳して経営科学と呼ばれています。日本では経済学部や経営学部は文系学部と捉えられがちですが、経済や経営を学ぶには数学力が必要と考える学生が私の授業やゼミを選んでくれています。
普段のゼミでは、オペレーションズ・リサーチの理論や応用研究を題材にして輪読を行います。
Q. 卒業論文にはどのようなテーマがありますか。
卒業論文は私がテーマを指定することはなく、学生が主体的に個々の興味に沿ったテーマで執筆を進めます。例えば、限られた人員で日中や夜間の勤務などをやりくりする看護師の勤務スケジュールを組み立てるプログラムづくりや、営業担当者が複数の得意先を訪問したり、観光客が複数の観光地を訪問したりする場合の最適な順番を導き出すプログラムづくりなどがあります。
理系の卒業研究の場合は、学部段階でも学内で発表会などが行われ、修士論文ともなると学会でも発表しますので、それなりの学術的な意義や新規性を持たせるために教員の関与も大きくなります。一方、私のゼミでは、学術的には既存の知識体系や技術を使うとしても、その学生にとって初めての経験として自分で考えた問題にチャレンジすることが、成長につながる価値あることだと考えています。
Q. ゼミ生の東問さんについて聞かせてください。
東くんは物怖じせず、極めて論理的に自分の主張を展開できる稀有な存在です。突出した彼の存在によって、ゼミに未知なる化学反応が起こるほど、彼は目の付け所が周囲と違い、彼がいることで議論が活性化します。多くの学生は、テキストの理解に努め、それができれば優秀。中には、理解できていないことに気付いていない学生、内容を咀嚼して消化できていないにもかかわらず理解したつもりになってしまう学生もいます。
一方、東くんはテキストの内容を疑うことからスタートします。本当に正しいのか、論理的といえるのかを検証し、誤りではなくても不十分な記述があれば、私自身も気付かなかった点まで指摘してきます。グループワークで彼が同じグループにいれば、周囲の学生は心強いはずです。
Q. 東さんを高く評価されていますね。
クイズのトッププレーヤーですので圧倒的な知識量も強みですが、論理的に考える力がずば抜けています。競技クイズの作問もしているので、問題として成立させるために飛躍や矛盾のない論理展開を考える習慣が身体に染み込んでいるのだと思います。また、常に先の先を考えているように思います。課題を出されてもすぐに答えにたどり着くため、その先の影響まで思考をめぐらせるのです。ある意味、周囲の学生とは足並みが揃わないのですが、それで構いませんし、超人的だと思います。それでいて、ゼミで目立ちたいといった意識は感じられませんし、自分は優秀なのだという態度で周囲と接するわけでもないのです。
人は誰かが自分より優秀であること自体は認識できても、実際にどれだけ自分よりも物事を理解できているのか、その優秀さのレベルまでは把握できないものです。しかし彼は、私が何を考えてどこまで理解できているかも見えていて、私のレベルを正しく把握しています。私の研究分野に関する専門的な知識については、当然私の方が豊富だと思いますが、汎用的な思考能力という点では、彼の方が優れている証拠なのではないでしょうか。
Q. 最後に受験生へのメッセージをお願いします。
世の中には、単一の正解や模範解答が存在せず、多様な考え方があって然るべき問題もあります。例えば最適化にしても、その対象や手法、内容は多様です。企業であれば利益の最大化に向けた最適化が重視されますが、公共機関の事業であれば公平性という尺度や視点も必要であり、どこに目を付けて最適化に向けた設計をするのかが重要です。
そこで大切なのは自分で考える力。その第一歩は、本を読むにしても人の話を聞くにしても、自分が理解できていない部分や、矛盾を感じる部分、納得できない部分を見付けることです。自分は何にモヤモヤしているのか、何を消化できていないのかを見付けられれば、次のステップとして、自分で調べたり、誰かに聞いたりすることもできるのです。その上で、理解できなかったことが腑に落ちる瞬間、わかった瞬間の喜びをできるだけ多く味わうことができる学生生活を送ってくれることを願っています。
クイズ研究会OverDrive
都立大のクイズ研究会「OverDrive」は活動日時が自由ですので、自分のペースでクイズを楽しむことができます。部室はほぼ毎日開いていて、行けばみんなでボタンをつないで早押しクイズを楽しんでいます。クイズ未経験者のための練習もあり、問題集も充実していますので、無理なく着実にスキルアップしていけます。ぜひお気軽に部室までお越しください。
2023年度代表
酒巻 壱太さん
毎年3月には「EQIDEN」という大学対抗の団体戦が開かれ、全国ベスト4の実績もある都立大。個人戦の「abc」では東問さんが2023年3月に優勝しましたが、団体戦では予選敗退が続いているので、予選突破はもちろんのこと優勝を狙います。