東京都立大公式WEBマガジン
2021.07.09
シリーズ 卒業生は今…! Vol.2

柴藤 亮介さん(アカデミスト株式会社 代表取締役CEO)

本学を卒業し、社会で活躍する先輩の皆さんにお話をうかがうシリーズ企画「卒業生は今…!」。在学時代の学びや学生生活、大学での経験と今のお仕事とのつながりなどを紹介します。

キービジュアル
柴藤 亮介さん

柴藤 亮介(しばとう りょうすけ)
アカデミスト株式会社 代表取締役CEO。東京都出身。東京都立大学 理学部物理学科卒業、首都大学東京大学院理工学研究科(当時)修了。2013年4月にアカデミスト株式会社を設立。学術系クラウドファンディングサイトおよび学術系メディアの運営を行う。

仕事をしていると日々、難題に直面しますが
研究で培った粘り強さで立ち向かっています

なぜ都立大に進学しようと思ったのですか?

もともと都立大の近くに住んでいて、子どもの頃から憧れていた大学でした。決め手となったのは物理学科があったこと。実は高校の物理の授業で、“なぜプラスの電気を持つ陽子同士が反発せずに原子核を築けているのか”について疑問を感じて、先生に質問したことがあるんです。先生から「それは高校で教える範疇を超えているので、大学で学んでください。まずは受験を頑張って」と言われたことで、教科書に書かれていることのまだ先にも学問があることを知りました。“肉眼では見ることができない原子の世界ってどうなっているんだろう”と興味がわいて、物理を学ぶために都立大へ。少人数制でしっかり学べるところも理想的でした。

大学・大学院時代の思い出を教えてください。

物理学科で学ぶことで原子核の疑問は解消されたのですが、次に物性物理学に興味を持ち、先生に質問に行ったら、考え方をアドバイスされました。誰かに答えを教えてもらうのではなく、自分で考えて答えを導いていくプロセスが大学の勉強なんだ、これが研究の入口なんだと感じました。主体的に学ぶ面白さを知って、迷わず大学院へ。
大学院では1年目にシリコンバレー研修に行き、この時に自分の価値観をガラッと変える出来事がありました。スタンフォード大学の大学院生と話をしたのですが、彼らは大学院で給料をもらって研究をしていて、日本の大学院生との違いに衝撃を受けました。「アメリカでは研究者は大学院生でも立派な仕事だと認識されているし、日本でもそうなるようにすればいい。自分で常識を変えていく動きをしたら?」と彼らから言われて、はっとしました。違う文化圏で全く異なる価値観に触れたことで、この後の考え方や行動が変化しました。

シリコンバレー研修時代の柴藤さん
シリコンバレー研修の際、ノーベル物理学賞受賞のロバート・ベッツ・ラフリン先生とお会いしたとき

起業することになったきっかけは?

シリコンバレーから帰ってきてから、研究者のいろいろな声を聞くために、異分野交流会を立ち上げました。首都大はもちろん、別の大学の研究者も巻き込んで、最終的には80人くらいのネットワークに。交流会では各自が自分の研究について発表するのですが、みなさん熱のこもったプレゼンで、とても魅力的なんです。研究者一人一人が光るものを持っていて、それを間近で見ていたので、研究者にもっと光を当てる仕事がしたいと思いました。研究者をもっと身近に感じてもらうと共に、研究しやすい環境を作っていきたい。それを実現するには自分が研究をするよりも、研究をやってきた経験を活かして、新しい事業を作った方がいい。学問全体に対しての影響力も大きく、社会に対する貢献もできると思いました。

柴藤 亮介さん
誰もが自分の推し研究者を答えられるくらい“研究支援”をメジャーなものにしていきたい

大学時代に培ったことは今の仕事にどう活かされていますか?

日本は科学技術に対する研究費用は増えていますが、その反面、ニッチな研究にはお金が行き渡りにくくなっています。その問題を解決するためにアカデミストではクラウドファンディングサイトを運営し、研究資金を獲得する支援を行っています。これまでに200名を超える研究者の支援を達成し、総額約1億5000万円の研究費用を獲得してきました。異分野交流会の仲間の多くが研究者になっているので、様々な研究者とネットワークがあるのは強み。それに大学院時代に学会などで数多くの研究発表をしてきたので、その時に身に付けたプレゼンスキルも、今の仕事に活かされています。

受験生や新入生にひと言お願いします。

もし今、自分が大学生に戻ったら、ずっと勉強しているでしょうね。大学時代は時間に余裕があり、大学にはその道のプロが大勢いるので、今思えば贅沢な環境だったと思います。それに都立大は総合大学で、物理だけでなく哲学やドイツ語など、様々な学問に触れることができます。僕は当時、授業後によく先生に質問していましたが、いろいろな先生の話を聞いて、いろいろな知識や考え方を身に付けてもらいたいと思います。

柴藤 亮介さん
クラウドファンディング利用者に柴藤さんの印象をお聞きしました

クラウドファンディング挑戦にあたりアカデミストのサービスを選んだのは、私たちのような哲学研究者の企画を成功させた実績があったからです。私たちは2020年4月に国際ワークショップ「Wittgenstein and Traditional German Philosophy」を企画したものの、新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより延期に。そこで、単発ではなく継続的な企画として実現させるため、柴藤さんに相談したのです。
柴藤さんが都立大で物理学の研究をされていたことは、企画がだいぶ進むまで知りませんでしたが、柴藤さんが法哲学研究者のラジオ配信に出演していたのが印象に残っています。それは様々な研究領域との対話を目指すアカデミストらしい企画でした。

「ヴィトゲンシュタイン哲学の国際ワークショップを開催したい!」プロジェクト 木本 周平さん

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