荒川キャンパス 健康福祉学部作業療法学科作業治療学実習室編
普段、あまり見る機会のない大学構内の施設で、「これはどう使われているの?」という素朴な疑問を解き明かします。今回は荒川キャンパスに注目。健康福祉学部作業療法学科の学生が発達領域の授業と実習を行っている、作業治療学実習室を探検しました。
健康福祉学部作業療法学科 伊藤 祐子 教授
芝浦工業大学大学院工学研究科機能制御システム専攻博士課程修了、1995年東京都立医療技術短期大学助手着任、2008年首都大学東京健康福祉学部准教授、2021年現職。高校3年時、偶然パンフレットで作業療法士の存在を知り、得意なモノづくりが活かせる作業療法に関心を寄せる。
Q.「作業療法」とは何ですか?
作業療法は、障がいや病気が原因で日常生活に困難を抱えている人たちの“やりたいこと”を叶えるリハビリテーションの一分野です。理学療法が運動機能や動作の回復を目指すのに対し、作業療法は食事・着替え・しごと・あそびなど暮らし全般の行為に携わります。認知面や精神面の改善のほか、近年増加の傾向にある発達障がいの子どもを対象にした作業療法もあります。対象者も新生児から高齢者まで多岐にわたります。
Q.「作業療法士」のお仕事とは?
人がいきいきと、自分らしく人生を送れるよう伴走者のように寄り添って支援をしていくのが作業療法士です。地道な仕事ですが、人生の物語(ストーリー)に触れることができるとても魅力的な仕事です。作業療法士は全国に約9万人いるといわれており、主な活動の場は医療機関や保健・福祉施設など。しかし、発達障がいの子どもが増加している近年は、特別支援学校や一般の学校現場での需要も増えています。
Q.荒川キャンパスってどんなところですか?
荒川キャンパスは、東京都荒川区にあり、健康福祉学部の学生が2年次から通っています。作業療法学科の発達作業療法学の授業では、キャンパス内にある作業治療学実習室や体育館で実習に励みます。本学の作業治療学実習室は他大学と比べても充実した設備を整え、より専門的な学修ができる環境です。
Q.作業治療学実習室はどのような目的の部屋ですか?
作業治療学実習室は、道具や機器を用いた支援技術を学ぶための教室です。特に、脳性マヒによる肢体不自由や知的障がい、重症心身障がいなどにより生活に支障をきたす子どもたちを支援する機器や遊具を豊富に揃えています。学生は機器や遊具を子どもたちがどう使うかを観察したり、子どもの発達障がいの度合いを客観的に理解するための発達検査の実習などに使用しています。
Q.どのような授業を行っていますか?
本来、子どもの発達は遊びのなかで育っていきます。しかし、身体の使い方や物・道具の操作が難しい発達障がいがある子どもは、物と人の関係性を構築するのが苦手です。こうした子どもたちの発達段階や発達課題、また発達障がいの種類や特徴に合わせ、おもちゃや遊具を使った遊びを治療に応用するための具体的な方法を学んでいきます。
Q. 具体的に道具・機器や遊具の使い方を教えてください!
遊具や作業機器は、子どもたちが自発的に情報を取り入れ、成功体験を積むことができるようにいろいろな工夫が施されています。学生がより実践的な力を身に付けられるよう、卒業生のお子さんに協力してもらうことも。実際に遊具や機器を使っている子どもを観察し、障がいの度合いをアセスメントしたり、どのようなリスク管理が必要なのかを学びます。
遊具につかまって目の前のボールにタッチ。チャレンジ精神を養うとともに、身体を伸ばすバランスの獲得など楽しい活動の中で姿勢制御を中心とした心身機能の発達を促します。
鉛筆の持ち方が難しい、筆圧が強すぎたり弱すぎたり、調整することが苦手な子どもに。手のカタチに合わせて鉛筆に装着し、定位置で持てるように支援します。
手の感覚情報が増幅するように、あらかじめ固めのループをエプロンの柔らかい紐に縫い込んでおき、子どもが結びやすくします。
オランダ発祥の、障がいのある方たちのために開発された光、音、匂い、振動、感覚を活用した環境支援のひとつ。作業治療学実習室の一角にあります。
中に入ってかくれんぼや宝探しをします。中に入ったときの感覚刺激により心身機能の発達を養い、子どもによっては気持ちを落ち着かせる場所にも活用できます。
4つのキャスターがついたボードの上に子どもが乗り、学生が引っ張る遊び。身体を起こしたり伸ばしたりできるようにサポートします。
最後に、学生の皆さんにメッセージをお願いします!
総合HP教員紹介ページ/
健康福祉学部作業療法学科 教授 伊藤 祐子(いとう ゆうこ)