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2021.01.27
特集 Vol.1 学長×次期学長対談

未来を拓く継承 「学生ファースト」で、これからも成長。

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2021年4月から、東京都立大学の学長に大橋隆哉特任教授が就任します。高度な研究力と質の高い教育という上野学長が大切に育まれた伝統を引き継ぎ、さらに飛躍することを期待せずにはいられません。本学の発展に尽力されているお二人に、東京都立大学のこれまでとこれからを語っていただきました。

キービジュアル
学長 上野淳 × 次期学長 大橋隆哉
学長 上野淳(うえのじゅん)

1977年東京都立大学大学院工学研究科博士課程修了(工学博士)。1984年同大学工学部助教授着任。2005年首都大学東京教授着任。2015年より同大学学長を務める。専門分野は建築計画学。主な著者に『未来の学校建築』『高齢社会に生きる』『学校建築ルネサンス』他多数。

次期学長 大橋隆哉(おおはしたかや)

1981年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了(理学博士)後、レスター大学(英国)研究員。1992年東京都立大学理学部助教授着任。2005年首都大学東京教授着任。2017年より2年間、同大学副学長を務める。専門分野は物理学・天文学。学外では日本天文学会理事、日本物理学会理事等を歴任。

出逢い―首都大学東京の発足にあたり

大橋:上野先生との思い出はいろいろありますが、一番は2005年に首都大学東京が発足したときです。都立の4つの大学が統合するということで理工学系の準備委員会が設置され、上野先生がまとめ役をされていました。時間がなく、カリキュラムも手探りの状態で他の教員が焦っているなか、上野先生だけは「大事なことだからじっくり考えましょう」と、どっしり構えておられたのが印象的でした。

上野:その後、私が基礎教育センター長(現大学教育センター長)となり、大橋先生に教務委員長をお願いしましたね。大橋先生はX線天文学の第一人者で膨大な数の研究論文を発表され、非常に忙しいのはわかっていたので、お願いに行くときは非常に心苦しい思いをしました。しかし、大橋先生のように優秀な研究者こそ、熱心に教育のことを考えて取り組んでくださる方であることが多く、委員長をお願いしたいのはそういう方なのです。頼みに行くのはつらいですが、何というか、“忙しい方に頭を下げる”のが学長として一番大変な仕事かもしれません(笑)。

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大橋: そうですね。頼まれれば、むしろ「頼りにされている」と喜ぶところもありますから(笑)。

上野:当時は私たちと基礎教育部会長なども含めたメンバーで「学生が学びやすいプログラム」をテーマに何度も話し合った記憶があります。統合したからには和を大切に、一つの大学としての一体感が醸成されるように最も気を遣ったと思います。大橋先生にはずいぶん助けてもらいました。

大橋:私はこうした委員会に参加するのは初めてだったので、どこまでも学生ファーストである上野先生の“教育者”としての姿を改めて目の当たりにし、多くのことを学びました。

歩み―学長、国際化担当副学長として

上野:私が学長に就任してから2年後(2017年)、大橋先生に国際化担当副学長をお願いしました。世の中的に、大学改革において学長のリーダーシップが求められていますが、本学には大橋先生の他にも研究で優れた業績を挙げ、いい研究者を育成されている教育者がたくさんいて、大学運営にも関わっています。ですから、常にチームワークで物事を決定してきました。特に大橋先生には交流重点校の開拓に尽力していただきましたね。

大橋:レスター大学(英国)、トムスク国立大学(ロシア)、ソウル市立大学校(韓国)での合同シンポジウムや調印式にご一緒したのがいい思い出です。

上野:もともと本学には100校以上の国際交流協定校がありましたが、研究者同士の交流や国際シンポジウムの開催などをより活発に行い、密な連携をとりたいという理由から交流重点校の開拓は火急の要件でした。大橋先生には、先ほどの3校に加えマラヤ大学(マレーシア)とも合意へ働いていただき、国際化担当として大きな仕事をしていただきました。

大橋:レスター大学は私が研究員として在籍していたことがあり、そのときの知人が副学長に就任されていたので話がスムーズに運びました。合同シンポジウムも実現し、非常に良かったですね。

上野:文系・理系問わず幅広い分野の研究者たちが先進研究の発表を行うとともに、今後どのように両大学の連携・交流を進めていくかを議論しました。大橋先生が双方の大学のことをよく調べ、組み立ててくれたプログラムがすばらしくて。

大橋:ありがとうございます。

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上野:そして私が毎年、入学式で学生に伝えてきたのは、可能であれば在学中に何らかのカタチで海外留学を経験してほしいということです。本学は経済支援を含め留学プログラムも充実しています。大橋先生も、そのつもりでいらっしゃるとは思いますが、今後もより一層、国際交流が盛んな大学になってくれたらというのが私の願いです。

大橋:本学の学生は、研究の質の高さは他大学に引けを取りませんが、少々大人しいかもしれません。都立大の持つ様々な大学とのチャネルを活用し、研究者だけでなくすべての学生が持っているポテンシャルを最大限発揮できるよう、研究と教育の両面から学生をサポートしていけるのが理想ですね。

魅力―中規模総合大学の良さ

大橋:本学の良いところとして、規模が大き過ぎず、小さ過ぎない中規模総合大学という点があると思います。教員の目が学生一人ひとりに行き届く教育体制で、自然に仲間意識のようなものが芽生える環境です。

上野:現在の教員数は約680名。これが1,000名以上になると学長の立場から各組織が把握しづらくなるでしょう。総合大学ですから、大橋先生のように宇宙物理を研究している人もいれば私のように建築を専攻したり、あるいは経営学だったりと、様々な特性を持つ人たちと親密な人間関係を築けるのが最大の魅力です。お互いを尊重し合い、時には化学反応が起きておもしろいことができる可能性が無限にあると思います。近年だと、大橋先生には博士前期課程の大学院生を対象とした分野横断プログラムの立ち上げに携わっていただきました。

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副専攻コースのさらなる充実を

大橋:自分の専門領域を深めるだけでなく、関連領域まで幅広い知識を身につけてほしいです。広範な学問領域があるという都立大の特長を活かして、いろいろな可能性を広げられればと思っています。

上野:学部生を対象としたものでは、副専攻をもっと充実させたいですね。現在は3つのコースが設置されていますが、あと1つ考えているコースがあります。また新たな文理融合型の教育プログラムも含め、大橋先生が学長になられたら本格的に検討していただくことになると思います。

期待―新しい教育スタイル

上野:新型コロナウイルスの感染拡大は、教育現場に大きな影響を及ぼしました。私が学長に就任した6年間で一番の出来事と言っても過言ではありません。ただ、大学キャンパス閉鎖の下で実施されたオンライン授業に関して学生からの評価は全般的に高く、教員は一定の教育成果を挙げました。

大橋:どうなることかと思いましたが、真面目にオンライン授業に取り組む学生がかなり多いと感じています。課題もしっかり提出してきますし。

上野:おそらく大橋先生の学長就任後は対面授業に戻ると思いますが、オンライン授業のメリットは引き続き活用していきたいですね。例えば知識教授だけオンラインで行い、知識の咀嚼部分としてディスカッションなどを対面授業の主流にする、とか。2020年は非常に不幸な1年ではありましたが、それを逆手に取り、新しい教育スタイルが大学教育の水準を一段階上げる良い機会であったと捉えたいです。

大橋:たしかにそうですね。様々なケースを考慮したうえで取り組みたいと思います。また、学生同士の一体感の醸成や友達づくりなど、対面での交流機会も大切にしていきたいです。

未来―学生、教員すべてが成長できる大学

大橋:私が学長就任後に取り組むべき課題は多いと感じていますが、3年前でしたでしょうか、上野先生のお声がけで『TMU Vision 2030』素案を作成したのは。

上野:先を見据え夢が持てる大学を目指したいという想いから、概ね10年後となる2030年における大学の将来像を示すことにしました。そのときも今も、目指すべき本学の姿は変わっていません。本学は世界と肩を並べる研究大学であり続けたいですし、高い水準の研究業績をすべての教員が目指しています。その教員による質の高い教育を受けた良い学生が研究室に入ってくるという循環が非常にうまくいっていると思います。

大橋:研究大学として、教員も学生も、のびのびと研究できる環境を整えるのが、執行部の役目だと思っています。『TMU Vision 2030』の実現に向けてかなり責任を感じています。

上野:大橋先生にお任せしておけば、何も心配はいりません。これまでの先生との活動で、多くの点で大学に対する意識が一致していると感じています。大橋先生、よろしくお願いいたします。

大橋:上野先生が育ててこられた東京都立大学を、さらに大きく、伸ばしていけるよう努力します。

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東京都立大学をさらに大きく
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